FATMAX夜食のデブロード

空母いぶきのFATMAX夜食のデブロードのレビュー・感想・評価

空母いぶき(2019年製作の映画)
3.4
色々と話がピーキーな方向性に向かいがちな内容に真っ向勝負した心意気や良し!である。
どこぞの誰かが原作好きだけど改変がどうだの役者の発言がこうだの吠えて散々罵倒した挙げ句

「観ない!」

と宣言するとか(観ないなら黙れ!)、頭ごなしに 戦艦が出る 戦闘機が飛ぶ 何より自衛隊が出る ってだけで盲目的に

「戦争賛美だ!」

と声を上げる暴力的平和主義の攻撃材料にされがちな こういう作品を素直に「楽しみです」と言うだけでも無駄に外野でメンドくさい事になったりするのだが、ワシはハッキリ言う。


『 かなり楽しみにしてましたよ!』


で、感想は…


原作は未見と前置きした上で言わせてもらうなら、まず…

『この話においては仮想の国家でも別に問題はない。』

もちろんダイレクトさは減るだろうが、コレは"劇場版/映像作品"である。
原作と映像化で改変はよくある話。
"コレはコレ"と考えればストーリーの本質に対してソコまで問題を感じない。

この作品は出来る限りのことはやりつつも〈エンタメ映画〉度数を高めにしたという事ではないだろうか。

ココがもう受け入れられなければ何をどうやったって受け入れられない。

だが「出来ない事はやるな!」では何も作れない。

ワシはいわゆる原作至上主義(原作厨)ではない。
そしてストーリーの〆方があの方向性ならば問題なく収まっていたと思う。
ゆえに上記の事に関しては支持する。


まず、主要キャラクターである2人のやり取りには唸る。
決して強硬派のプロパガンダではなく、かと言って穏健路線の耳聞こえ良いメッセージの上っ面な代弁でもない。それぞれがぶつかり合いながらも"現実的に"最良の結果を目指す。

そういう意味で言えばこのストーリーの大筋は大変良いバランス感覚の着地であると思う。




ただ、

ただし、である。

この方向性ならばもっと攻めて良かったのではないか?と思う部分も少々ある様に思う。

言ってしまえばこの作品、内容が内容なので自衛隊の協力は無い。
ただコレは逆を言えば『足枷(あしかせ)がない』という事。

ワシは基本自衛隊否定派ではないが、自衛隊はアメリカ軍等とは違い、ハードな内容の場合 イメージを考え結果的に協力しない事があるのは知っている。

ならばCG演出等も含めアクション造形には もう少しハードな演出を増しても良いのではないか?とも思えるのだ。
(決して予算の関係でショボいとか言ってるワケではないし、物語を攻めろと言ってるのでもない。一部パート(演出)の仕方の話。)

それにプラスして、

…というよりもココからが本題か。



この監督の演出ではサスペンスアクション的なテンションの持続が難しい。


言ってしまえばこの監督、織田裕二主演【ホワイトアウト】の頃から話運びが変わらない!

タメなくて良い場所さえ溜め演技をさせる結果、微量の積み重ねが全体の間延び感に繋がる。
展開上テンポが遅いのは素人目にでも明らかなシーンすらある。

全編通してハイテンポでヤレとか言ってる訳ではない。
だがコレは時代劇ではない!
流す所はサクッと流すべき。

そもそも原作とて兵器関係の演出はマニアからすれば若干整合系に欠けるタイプの作品だそうで。

ソレがダメと言うのではない。
むしろそれならば!
更に言えばマニアックゆえ内容を知らない人の為に多少説明的になる部分だからこそ!

『時として勢い押しは大事でしょうよ!!』

ちゃんとアガる展開もあるのにソレをブレーキかける"常に微妙に遅め"、違う言い方をすれば"中途半端に丁寧"なこの演出スタイルはジャンル的に合わない。


そのくせ詰めれるモノは詰める。

上でも書いたが、別に映画としてキャラクターを増やしたりストーリーの改変はしてくれて構わない。
(忠実なコピーが必ずしも映画として成立するとは限らない)

ただスピードアップすべき薄い部分はスピーディーに仕上げてくれないと全体的に鈍重になる。

削る部分は削る。
消す部分は消す。
コレは必要。
連ドラじゃないんだから。


で!

要るかコンビニ!??

アレ、要るか!!???

アレだけ何回も出てくりゃ何かがキャラクターか物語に繋がってると思うじゃん。
後々重要なんだろうって思うじゃん。

こちとら何なら序盤「ミキプルーンは ばっさーの親か何かなの?」ぐらいに考えてたら、結局はスーパーエキセントリックシアターが

「こんな状況だし、もう潰れちゃったからコレ食べて。」


バカなのか!!??

結局 繋がってる部分がサイドもサイドの話じゃん。本筋一切関係ねぇじゃん!

東京/日本が大パニックです!な演出だってもっとタイトにヤベェ感出せるでしょうよ!
《ココもコンビニ使えるじゃん》としか見えないんだよ!

ナニコレ?
忖度??
流行も下り気味なワード"忖度"??

「配給、事務所、広告会社に狙い撃ち!アンサンブルキャスト映画に〈ソンタック600〉」ですか!?


《 だ と し て も 》だ!!

製作予算の関係でミキプルーン入れないとダメ言うならもっと上手く差し込めよ!
役者はダメじゃねぇよ。
コレに関しちゃ脚本がダメ過ぎだよ。

あのコンビニ本当に要らない!!
時間の無駄!!

もう一度言う。

『バカなのか!!!????』


艦内でのドラマパートと官邸のポリティカルサスペンスパートという同じ事案でありながら立場の違う人間ドラマを引き立てる為のプラスなら構わない。

削ぐ様なモンをブチ込むな!

自衛隊の協力無く予算も限られているであろう中でアレだけのサイズな作品を作るのだから、戦闘機の演出がやたらヘルメットのバイザー多用とかCGパッとしないとかそんなのは「別に良いのよ。」
頑張って工夫したんでしょう。

でも頑張ってソレなら他のパートで補う事をしなさいよ!

ソレが出来てないから全体的に

『 …ん〜、なんだかなぁ〜。』

ってなるんですよ。



演者が総理をあんな感じにしたのがどうとか公開前の発言で大荒れとか、実際には映画自体と離れた外野のノイズ
《どーーーーでも良い!》
むしろあの総理は人間味あって とても宜しいと思う。

2人のメインキャラクターの描き方にも文句は無い。

アンサンブルキャストなのだから個々に好みは多少出るだろうが(まぁワシもいるけど)全体的にはソコまで文句は無い。

あり得ない(と内情を知るtwitterフォロワー様から聞いた)関西弁マンだって映画におけるコメディリリーフとしては非常に良い塩梅。

必要性ゼロなコンビニのミキプルーンすら単体で見れば与えられた役をちゃんと演じている。


つまりはコレ製作サイドに問題アリだ。


大筋なストーリーラインはメッセージ性も含めてとても好印象。
いや、むしろ褒めまくりたいぐらい。
なのにソレを上手く料理出来ていない。

改変するならするで丁寧に。
(勢い押しだってテキトーとは違う)
足すなら慎重に。
そして時には良い演技でも思い切って切る!

コレが出来ないうちは、こんな賛否両論湧き起こる事が確定している内容の

『ハードな"エンタメ作品"に手を出すべきではない』

と、ワシは思うよ。

過度な外野の文句に否と言い、
映像化を応援してたから身だからこそ、
話の着地が良いと思えたからこそ、


『 残念です。』


もし本筋の物語もダメだったら、もっとスコアはドギツく下げてますよ。