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ウトヤ島、7月22日のRenのレビュー・感想・評価

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)
3.5
【ノルウェー連続テロ事件】2011年7月22日、極右の男がノルウェーの首都オスロにある政府中枢部で爆破テロを行った後、ウトヤ島で労働党の青年69人を銃殺した。両事件で77人が死亡、319人が負傷。ノルウェー国内において、戦後最悪の惨事とされている。
(Wikipediaより)

評価が芳しくないけど、個人的には最高だったし全員に観てほしい。フィクションとは何かが詰まっていたと思う。以下、偏愛と自論で固めた感想。

72分間ワンカット(実際にはもっと長い時間やっている。事件が72分というだけ)によって、絶対に体験できない「過去の」「実在の事件を」「当事者たちと同じ時間」「同じ目線で」体験させるという劇映画でしか為し得ない体験をさせてくれる。『アバター』が観客を未知の惑星パンドラへ連れて行ったように、『ゼロ・グラビティ』が観客を恐怖の無重力空間へ連れて行ったように、今作は観客を2011年7月22日のウトヤ島へ連れて行く。映画とはその題材が現実的であろうが非現実的であろうが等しく非日常を描くものであり、今作はそういう意味で究極的に「映画」だ。

銃声が変拍子のように轟き続ける中、こちらまでも息を潜めてしまうような臨場体験。自分は一切退屈しなかったし、最後までずーっと前のめりで鑑賞した。
疑似体験なので中弛みや退屈という意見もあって、それもとても分かるけど、個人的には長回し大喜利が蔓延る昨今の映像作品界においてこれ以上ない長回しの使い方だと思ったし、そういう構造自体に興奮し息を飲みハラハラした。

「飽きた、つまらなかった」という批判に対し「これは実在の事件の話だから面白いとかではない」という批判に対し「それでも脚色してるフィクションじゃん、面白くなかったら意味無いでしょ〜」という批判に対し「映画=フィクションの力を目一杯使っている構造自体が臨場体験を作り出すための脚色でとても面白いんです。内容はそれに伴って補填した瑣末な部分ですよ」と返したい。それでもつまらないのならつまらないで仕方ない。映画はそういうもの。

事件の凄惨さとかトラウマ映画とかの文脈ではなく、「映画・フィクションってこうじゃん」と改めて思えた点で最高だった。前者に関しては各自Netflix『7月22日』を観て補完してほしい。今作とはまた別角度から同じテロ事件を照射した、表裏一体の傑作だ。

その他、
○ 流血はほぼ無し。グロ耐性が無くても観られる。ただ緊迫感のみ。
○ 序盤に如何にも重要人物でございといった人物が出てくる辺りは、劇映画の王道すぎると思った。
○ 出てきた瞬間に『シンドラーのリスト』じゃん....と思った某アイテム、マジでそのまま使ってきた。基本的に伏線めいたものの使い方は微妙だった。
○ それまでのじわじわと蝕むようなテンションとは裏腹にラストはかなりティピカルだ。その結末しか考えられないと言われればそうだけど、そこまでしなくても....とは少し思った。
○ 実は冒頭のカメラ目線が一番印象的でトラウマ。
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