このレビューはネタバレを含みます
私は3回泣きました。
コーヒーを時田家の女が入れると、強く思った時へ行ける。しかし1度起きたことは変えられない。コーヒーが冷めきる前にコーヒーを飲み干して戻らなければ時空を彷徨う"幽霊"になってしまう。
1つ目。重度の認知症の妻に看護師として接している旦那が、妻が「渡し損ねた」と今でもずっと持っている手紙を受け取るために過去へ戻る回。
戻ったのは3年前。そこには自分に微笑み返してくれる妻。現在は夫の顔も名前も忘れてしまっている為、夫婦らしい会話をするのはいつぶりの事だろう。目の前の旦那が未来から来たのだと気づき、自分の病気はどうなってるのか、貴方のことも忘れてしまったかと尋ねると、旦那は「すっかり良くなった、それを伝えに来たのだ」と涙目で言う。その表情で妻は全てを悟る。
受け取った手紙には旦那の誕生日を祝う文面と病気を宣告されたという報告が。そして、「貴方の前では患者でいたくない、最後まで夫婦でいたい」と。ここも泣き。今まで旧姓で呼んでいた旦那は呼び方を夫婦だった頃へと戻すことに。夫婦の愛に涙。
2つ目。ずっと避け続けてきた妹が自分に会いにくる途中青信号で轢かれてしまう回。姉(吉田羊)は妹の死を変えることは出来ないと分かりつつも、最後に妹が会いに来てくれた日へ戻る。妹に"実家に連れ戻される""実家の旅館を継がせられる"と思っていたが、妹の夢は姉と旅館を経営することだった。旅館を継いでも良いと伝えたとき涙を流して喜ぶ妹と、些細な妹の夢が自分のせいで叶えられなかったという後悔。
コーヒーが冷めるアラームが鳴り響く店内で妹に、「11/9、家から出るな」と最後の足掻きをする姿が必死で涙が溢れた。
3つ目は時田数自身の物語。6歳の8/31、母は数の入れたコーヒーで時空を越え、そのまま戻らず"幽霊"となった。母は数が産まれた最初のお正月に亡くなった父に会いに行ったと思っていた。が、母が会いに行ったのは4ヶ月後のクリスマスの夜、未来の数だった。あと3ヶ月の命、と余命宣告された母は数を心配して未来を見に行ったのだ。しかし、数に「行かないで」と泣きながらしがみつかれ、戻るに戻れない状況に。「お母さん戻って!」と叫ぶ、未来から来た数の声も虚しくアラームは鳴り止んでしまう。母は数が未来から来たことに気づき自分は戻れなかったのだと悟る。大人になった数との会話。「好きな人はできた?」「その人も数の事が好き?」母の言葉に泣きながら頷く数の姿にも涙。早々に数のコーヒーのアラームも鳴ってしまう。戻りたくないと泣きじゃくる数に「向こうで待ってくれている人のことを思って」と戻ることを促すシーンは離れたくないけど離れなければいけない、親子の引き裂かれるような心の痛みが伝わってきて辛かった。
数が現在へ戻ったとき、自分にコーヒーを入れてくれた少女は自分の娘なのだと気づく。
最後、数が娘を出産し抱き抱えながら「みき」と呼びかけ、旦那(伊藤健太郎)がどういう字にするか問うたとき「ミライと書いてミキ、この子がそう言った」と言った場面も、その後の「早く大きくなれよ、頼みたいことがあるんだ」と旦那が未来に呼びかける場面も声色がとても優しくてなんだか凄くジーンとくるものがあって良かった。