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アイネクライネナハトムジークのBGのレビュー・感想・評価

3.8
君に届け。"ある、小さな、夜の曲"。
アイネ・クライネ・ナハトムジーク。

『出会い』とは、まだ来ぬ未来に見つけるものではなく、思い出の中に見つけるものなんだなあ。感無量。正直に言います。ボロ泣きです。おっちゃん、泣きまくり。恥ずかしーい(〃ω〃)イヤ〜ン🎶

ご存知、伊坂幸太郎の同名小説の映画化です。主要人物達の関係が少しずつ交錯しながら、ある恋愛ストーリーを中心に、大切な一歩を踏み出す人々の群像劇。今注目の今泉力哉監督により、オール仙台ロケでハートウォーミングなストーリーに仕上がっておりますよ、ええ。
なお、某ライトなイヤーさんは権利と公開時期の関係上、ご出演されておりません。悪しからず。(適当)

さて、ゴメンだけど先に悪いとこを言わせて。
画がダサい。全編に渡って構図が如何ともし難い。画面構成で正面からの1人画がまあ多いこと多いこと。それが、ど真ん中にアップされまくるもんだから、なんかもう恥ずい。
ただ、それが逆に活きる場面もあるので、もしかしたら意図的かも分からんね。カッコいい画が必要な作品でもないしなあ。ついでに言えば、効果音的な劇伴(曲ではない)も割とダサい。
そして、サンドウィッチマンのゲスト出演は、悪いけど完全にノイズ。あの使い方はいただけない。ヘビー級ボクサー役の彼も流石にもう少し身体作らないと厳しい。むしろヘビー級と言う設定の問題か。
群像劇ってそこまで観てないため、分かってないことも多かろうが以上だよーん。さて、本題へ。

ストーリー自体は、伊坂幸太郎の原作力によるものが大きいけど、キャラクター整理を行いつつ、連作短編を上手く再構成していると思う。何ヶ所かテンポがクソ怠いシーンがあるのは否めないけど。
分かり易く伏線がみるみる回収されることで情緒が深まり、次々と繋がっていく人間関係も、独特の箱庭感が生まれて"スモールワールド"を形成し、自然にホッコリ感が生まれている。
ありふれた日常のありふれた出来事。それをほんの少しだけ視点を逸らして、時にユーモラスに。時に心温まるエピソードに。
これらの特徴は、まさに伊坂作品の魅力であり、そこがキチンと描けていると言えるんじゃないかなーって思ったよ!ワシは。

そして。伊坂作品最大の魅力の1つと言えば、何と言っても瑞々しい台詞回しだろう。
本作でも、伏線としての台詞が要所で効いていて、そうした場面では、やっぱりニヤニヤしてしまう。ニヤリニヤリ!
序盤ではウィットに富んだ台詞として印象づけ、それを終盤では異なる場面で繰り返す。
すると全く同じ台詞が別の情感を持ち始め、意味以上の言葉として観客に刺さる。ま、原作からのものなんだけど、その良さを損なわずに使ってるのだから、映画化として文句はない!
それを台詞だけでなく、動的演出の中にも取り入れているところが、なお良し!少々の安直さは感じるものの、螺旋的に物語上の世界が構築される様も、やはり伊坂ワールドとして面白いんじゃないかな。

少し役者陣にも触れると、多部ちゃんが好き。大好き。超好き。特にあるシーンで、破顔する横顔が一瞬写るのだが、その仕草が自然体でまあ愛らしい‼︎ 演技ではなく素が出た瞬間を押さえたものだったとしても、今年イチでキュンキュンした!多部ちゃんはもっと評価されるべき!そして、今泉監督、あんた良い仕事したよ!まいまい使ってくれたら更に良かったけどな!


「俺ってツイテるな。」「間違いなく当たりの方。」それは、出会った時に分かるものではない。日頃、忘れがちな気持ちだけど、振り返った時に初めて気付く相手への想い。今をもう一度見つめ直し、改めて前へ向き直す。実際、俺も個人的に思うことがちょっとあり。どうやら、大切な作品になりそうだ。

『出会い』をテーマに6つの短編を再構築し、嫌味なく素直にホッコリできる良作。ただし割とダサい。でも作品的にそれも良きかな。だって本気の想いなんて、そんなもんだろ?
「私たち、何で一緒にいるんだっけ…」と思ったり思われたりするカップルやご夫婦、「会社と家との往復で出会いがなくて」 と嘆くソロ活動中の皆々様、「何か切欠さえあれば、今と違う自分になれるのに」と心悩ます青少年の諸君。オススメですぞ!
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