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HELLO WORLDのBGのレビュー・感想・評価

HELLO WORLD(2019年製作の映画)
3.8
僕と彼女と、先生と。記録と記憶は認識する主体が違うのだけど、そこに区別がなくなるのなら、もう僕は存在できないのかも知れない。
だけど、どうしても欲しい物が、僕には、ある!

高校生の恋愛模様を中心に、変わる自分、変わる世界を描いたSFファンタジー。
所謂、セカイ系と言うヤツっぽい。あまり芳しくない評判ですが、俺は好き!いいよ、これ。

確かに、いつかどこかの映像表現が散見してフレッシュさはない。作画、と言うかCGも特段の驚きは提供してくれない。それにまあ、主人公等のリアクションなど、如何にもTVアニメにあるようなデフォルメが過ぎるステレオタイプのものかも知れない。

それでも本作はしっかりとSFだったし、恋愛映画としても、台詞だけで済まさずに、きっちりと映像として表現していた。
バス停で別れる時の一行さん、河原での一行さん、部室での一行さん。
主人公である堅書くんの主観において、恋が始まる気持ちが手に取るように分かったし、何なら一行さんの気持ちまで分かるようになっている。
一方通行的な非常に童貞くさい恋模様ではあるのだけど、王道的な成長も描かれ、無駄なエロに走ることなく、作品が示すテーマにブレがなかったと言える。

そして、これが超大事な伏線になっているところが素敵。つまり、SFの世界観で恋愛するだけでなく、恋愛そのものがSFの世界観に欠かせないキーになっているのですよ、素敵!だから好き。

ではなぜ、評価がイマイチなのか。
作品のメインターゲットは中高生なんだと思うけど、その割に後半の説明が結構薄い。それ故に、よく分からないうちに終わってしまう。そして、明にも暗にも振り切れていないため、印象としては弱い。人物の心の機微も意外に繊細で、いかにもアニメ的な行動ともズレを感じる。
つまり、素材や表現は若者向けなのに、テーマや人物の心情は割と大人な感情もあり、アンマッチなために中途半端感が否めないと思うのだ。

よって、どちらの評価でも不思議じゃないし、斬新な作品でもない割に、賛否両論となっている次第と推察する。

本作は、ジュブナイル的な青春ストーリーと言うよりは、その一歩手前の物語と言う微妙な立ち位置にあり、それ故の脆さを作品自体も踏襲してしまったと言える。
しかし、そうしたアンバランスな部分も、ある意味で本作の物語における本質であり、どちらにも転び得る不確定な未来を描いているとも言える。

その中で足掻き、不安な気持ちを押し殺し、命懸けで飛び込んで、新しい世界の扉を開ける。

これこそ、若者のみが持ち得る『創造力』ではないだろうか。

遥か、先へ、進め。
幼すぎる恋だと、世界が後ろから指差しても。
迷わずに進め、進め。
2人だけの宇宙へと、ポケットの中で震えた、
この手で今!君を連れ出して。

今日は昨日の僕じゃない。でも、明日の僕も僕じゃない。僕が僕であるのは、今の僕だけだ。
さよなら、イエスタデイ 。よろしく、ニューワールド。

三角関係も見所の面白い青春SFストーリーでした。驚きは少ないけど、余白の考察も楽しめる素敵な作品でしたよ。誰が何と言おうとも、俺は好き!
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