Inagaquilala

アイネクライネナハトムジークのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.4
「愛がなんだ」で痛い系女子の心情を見事にドラマ化した今泉力哉監督の作品ということで、かなり期待して観た。原作は伊坂幸太郎。彼の小説は、いろいろと叙述に策を凝らすので、なかなか映像化に関して難易度は高いが、過去には「アヒルと鴨のコインロッカー」(中村義洋監督)などの成功作もある。この原作は、いくつかの短編とそれらを縫い合わせる「解決編」から成るオムニバス形式の小説。長編でもなかなかハードルは高いのだが、さて、短編をひとつの作品にまとめあげるとなると、さらに緻密な作業が要求される。

結論から言えば、正直、観た後にすっきりした感じは残らない。伊坂作品にある、なるほどという「読後感」は、この作品にはない。何かモヤモヤしたままで終わってしまうのだ。今泉監督は、かなりの原作の改編を行なっているのだが、それがあまりハマっていない印象だ。一応、主人公は三浦春馬扮する会社員の佐藤なのだが、その他にもいくつかのカップルが登場し、複雑な構成を取っていくのだが、それぞれにメリハリが感じられないため、それぞれの物語が打ち消しあってしまう。もう少し強力に主人公寄りに再構成したら良かったのかもしれない。その大胆さに欠けているのかも。いずれにしろ、伊坂作品の映像化は、映画監督にとっては、チャレンジすべき「山」のひとつなのだろうが、今泉監督には、また別の作品でそれを見せてもらいたい。期待しているだけに。
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