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シシリアン・ゴースト・ストーリーのkanaco4月末までお休み中のレビュー・感想・評価

3.6
実際に起きたジュゼッペ事件にファンタジーとラブストーリーを融合させた幻想的な作品。「痛ましく恐ろしい現実の事件の重さ」と「架空なるも純粋で美しい恋愛の切なさ」の対比が静かにも色濃く映える。鑑賞前に “ジュゼッペ事件”について少し知識を入れた方がスムーズに物語に入っていける気がする🤔(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

1996年に実際に起こったジュゼッペ事件をモチーフとし、ファンタジー的世界観とラブストーリーを融合させた幻想的な作品。「痛ましく恐ろしい現実の事件の重さ」と「架空なるも純粋で美しい13歳の恋愛の切なさ」の対比が静かなるも色濃く映える。

あらすじ:ある日13歳の少年ジュゼッペが突然姿を消した。ジュゼッペに恋する同級生のルナは大人たちに助けを求めるが何故かみんなが沈黙し取り合ってくれない。謎の失踪を受け入れることができないルナは両親に反抗しながらジュゼッペを探すが…という話。

本作は、ジュゼッペ事件については具体的な説明があまりなく、基本的にはジュゼッペに恋する少女ルナの視点で事件を描いていく。加えて少年少女の現実と空想が入り混じるため、全体的に何が起こっているのか分かりにくさがあるかなと思った(私だけ?)。この映画のネタバレではなく、現実の“ジュゼッペ事件”についてある程度の知識を入れてから鑑賞した方がスムーズにストーリーに入っていける気がする🤔

人間サイドの不穏で暗い雰囲気に対し、イタリアの田舎の自然豊かさや野生の動物たちの可愛らしさが、本来の村の長閑さと美しさを思わせる。また視覚だけでなく水の音、風の音など聴覚的な部分でも、作品の一貫した静かな感じと相まって印象的だった。

現実世界のジュゼッペに思いを寄せる少女がいたかどうかは定かではないが、この映画に出てくるルナは完全に架空の人物。当然の如く、ジュゼッペが監禁の時に心のよりどころにしていた“ルナと心通わせた思い出”や、スピリチュアル的な魂の再会はフィクションである。本作よりも、現実の事件の方がよほど残酷であることは恐ろしい。ジュゼッペに捧げられたこの作品は、“美しさ”と“静寂”と“残酷さ”が重なり合ったこの世の光と闇を描く物語であり、とても悲しかった。

⚠🐝「以下、現実で起きたジュゼッペ事件の概要です。事件の概要を知りたくない方、残酷表現あるので注意ください。」




ジュゼッペ事件…1993~1996年シチリア。マフィアの一員であった男が逮捕され、司法取引に応じる。その告発を阻止しようとした仲間のマフィアが彼の息子ジュゼッペが誘拐。しかし父親が息子の誘拐後も告発を止めなかったため、ジュゼッペは779日の間、人質となったまま転々と場所を変えながら監禁され、最終的に絞殺。遺体は硫酸で溶かされ、その後湖に破棄。亡くなる時は30㎏しか体重がなかったという。