ちろる

クレアのカメラのちろるのレビュー・感想・評価

クレアのカメラ(2017年製作の映画)
3.6
カンヌ映画祭の裏で起きる韓国人3人のトライアングル。

フランスに来訪中、突然社長からクビを言い渡されたマニ。
訳もわからぬまま受け入れ今、カンヌの海岸を彷徨う。

そして、同じく一人旅をするフランス人クレアに写真を撮られるところから2人の交流が始まる。

フランス人であるクレアと韓国人キャストの間では、共通言語である英語が用いられる。
互いに頭の中で翻訳をしながら会話を進める絶妙な間合いが緊張感を与える。

クレアはまた、違うシーンで映画監督のソと、マニの社長ナムに出会い食事をする。

物語はマニとソ、ナムの大人の三角関係の因果をクレアが客観的に切り取るというもので、それほど大きなサプライズはないけど、このじわじわと関係性が見えていくのが楽しめるかどうかがこの作品を楽しめるかどうかのキモとなる。
ちなみに物語の一番の盛り上がりは、ソがマニのホットパンツブチギレる所。
こんな前時代的おっさんの映画、どんな酷いもんか拝みたい。

「写真を撮るのは
物事を変える唯一の手段だから」

と、クレアは言う。
実際写真を通して、マニはうっすらと自分の解雇理由を知り、失笑する。
写真が探偵の証拠みたいになるという意味合いもあるし、「撮られたあと人は変化する」とクレアが言ったようにカメラを通過して人が変わっていくことを示唆している。
「被写体になる」というのは、写った自分を見たり、写されている自分を客観的に想像することで価値観に変化が生まれる。

罪悪感を抱えるソも
感情的に動くナムも
後悔を持つマニも

皆カンヌの風に吹かれて、クレアのカメラを通過して少しだけ変わっていければいい。
韓国帰ったら、マニは堂々とナムの会社を訴えればいい。

カンヌで生まれた韓国人同士のいざこざが、パリ在住のクレアのカメラを通過して少しだけ滑稽な物語になる。
一つ一つの行動はそんな意味はなかったとしても、やっぱり全ては必然なのかもしれません。
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