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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へのmのレビュー・感想・評価

4.8
キレッキレの演出と音楽センスで紡ぐ、中学最後の学年を迎えた冴えない女の子の血の滲むような奮闘劇。自意識が未熟な時期のもがきはかつての自分の事も思い出しつつ大人になった今客観的に観るとイテテテとなる事が多すぎて、これはしんどい・・

冴えない10代にとって陽気さと活発なコミュニケーションを強要されるアメリカの学校生活は地獄だが、承認欲求を容易に解消できるが仲間間の関係性の息苦しさも増したSNS時代では更にしんどさが増す。指を切っちゃう程にひび割れたiPhoneの画面が主人公のイタさを物語る。

あの夜の車の中で起こる事は、(表面的には大事には至らなかったとしても)人の心を挫くには十分すぎる酷い出来事で観ていて心底辛かった。そんな出来事で落ち込み果てた娘に対して心配性でキモがられてるシングルファーザーのお父さんが向けた言葉は、【親の子への愛情】という括りを超えて【人が人を育てるという行為の尊さ】まで感じさせる美しい言葉で、それは主人公にとっても私達観客にとっても一生忘れ得ないものになるだろう。

等身大の自分を受け入れた主人公の微笑んだ横顔を見て、そっと微笑んだお父さんにピントが送られた瞬間に涙腺が緩む。最後の最後まで猫背で歩く主人公の背中を見つめるカメラの優しさ。傑作でした。


ここから先は余談です。
主人公がネットで色々SNSを観てる時に普通にTWICEのMVが流れるのが色々感慨深い。BLACKPINKとかBTSとか向こうで売れてるし、アメリカのごく普通のティーンがイケてるものとしてK-POPを聴く時代になったのね。

アメリカの学校は避難訓練じゃなくて銃乱射事件が発生した時の訓練をするという事実に震える。
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