さすらいの旅人

告白小説、その結末のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

告白小説、その結末(2017年製作の映画)
3.5
ネズミが二匹出ても、殺鼠剤には注意しましょう!
【VOD/WOWOWオンデマンド/配信視聴/シネスコサイズ】

ラストは伏せるがロマンスキー版「ミザリー」のような映画だ。
御年89歳のロマンスキー監督は「ロズマリーの赤ちゃん」「テス」等の名作を多く製作しており、私のお気に入り監督である。有名だからこそ、この作品の女流作家の様に熱烈なファンを生み出し、逆に翻弄される場合があるのだろう。

さて、本作はスランプ気味の女流作家に意味ありげに近づいて来る熱狂的ファンとの共同生活の物語だ。単なるファンから、身の回りの世話やマネージャー的活動を勝手にする過程はサスペンスフルな展開で面白かった。本来は新作に向けての環境作りを目的にしていたファンが、徐々に精神的支配も狙っていく。

本作は巨匠らしい重厚なドラマであったが、エヴァ・グリーンの演じるファンの目的が良く理解出来なかった。突然ヒステリックになり、作家に反抗する仕草は精神的に不安定だ。また、反対に自分の過去を告白するなど心を開いたりもする。作家を多方面から管理して、刺激を与えて新作のヒントを無理やり与えているような感じだ。

後半この二人の関係はある事をきっかけに恐ろしい展開を迎える。すこし展開が強引で、突っ込みどころも多くある。ラストはポランスキー映画と言うより、フランス映画らしいモヤモヤ感が残る描写で終わる。現実なのか悪夢なのかは観客にゆだねられる。