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多十郎殉愛記のトムトムのレビュー・感想・評価

多十郎殉愛記(2019年製作の映画)
3.5
中島貞夫の20年ぶりの監督作品でチャンバラ時代劇となれば見に行かないわけにはいきません。

中島貞夫監督と言えば京都人にとってはKBSの「中島貞夫の邦画指定席」の解説でお馴染みでこれのおかげで古い時代劇をかなり観ました。

ドキュメンタリー「時代劇は死なず ちゃんばら美学考」において殺陣シーンだけ撮影した作品を一本の長編にした様な作品に思います。
ドキュメンタリーで語っていたチャンバラ論をそのまま作品にしたような走って、走って、斬って、斬られるチャンバラでした。

黄金時代の剣戟スターと比べるのは酷ですが主演の高良健吾は素晴らしいと思います。
生きる目的の無い厭世的な剣の達人の長州脱藩浪人 多十郎を色気たっぷりに演じています。
小顔すぎるのが時代劇においてはマイナスですが。

傷ついた弟と愛する女を逃すため多勢に向かう散りざまを描くスタンダードな時代劇ですが中島貞夫監督が語る どちらが勝つかわからない戦いを堪能できました。

ラストは結構ビックリしました。

多十郎を追い詰める見廻組の精鋭部隊 抜刀隊の隊長を演じる寺島進は良かったです。

京都が舞台で皆ちゃんと京都弁を喋っているのが当たり前の事ながら素晴らしいと思います。

京都弁プラス着物の多部未華子は今まで見た中で1番色っぽかったです。

永瀬正敏や栗塚旭のゲスト出演も嬉しい所です。
吉本の映画製作にはあまりいいイメージはありませんが今作の様な作品にお金を出してくれるのは有難いです。
殺陣をできて動ける役者の絶対的な人数が少なくなっているので吉本の若手芸人の希望者を集めて訓練して使っているみたいです。

殺陣や着物や小道具などの時代劇文化は日本が世界に誇れる物で一度でも断絶すると2度と復活しない可能性があるので時代劇はどんどん作られる事を望みます。

今作の監督補佐についた熊切和嘉監督と谷慶子監督は伝承者として頑張って欲しいです。

チャンバラに至るドラマにもう一押し欲しい作品ですが応援したい気持ちは五億点です。
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