ノラネコの呑んで観るシネマ

止められるか、俺たちをのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

止められるか、俺たちを(2018年製作の映画)
3.5
1969年、若松プロの助監督となった吉積めぐみを軸に、映画に集った若者たちの刹那的青春を描く群像劇。
映画のことなど何も知らないど素人の女性が、急速にインディーズ映画の沼にハマって出られなくなる、ある意味ホラーな青春映画。
当時の若松プロの関係者が、存命の人を含めて実名でバンバン出てくる。
「え?あの人も?」的な興味を含めて、日本映画史を紐解く歴史映画として非常に面白い。
高間賢治なんて、あんな赤裸々に描かれちゃって良いんだろうか。
本人も参加してるから、良いんだろうけど。
低予算は歴然で、映し出される東京は明らかに現在。
まあこの辺は若松孝二っぽいと言えばそうなので、あえてかも知れない。
だが肝心の若松孝二や大島渚が、コスプレにしか見えないのはまいった。
これは別に役者が下手な訳でなく、本人とあまりにも纏った空気が違う。
世代の差もあるだろうが、足立正生なんかは悪くないので、これはやはりミスキャスト。
門脇麦は良いんだけど、こちらは主人公としては明らかに描写不足だ。
「赤軍 P.F.L.P 世界戦争宣言」の製作で、若松プロが変質してゆくなか、自らも転機を迎えるのはいい。
しかし、どういう葛藤を経てあの最期に至ったのか、結局よく分からない。
個人的な興味からは大好物な作品だが、吉積めぐみの青春映画としてはやや食い足りず、若松プロの部分は再現ドラマ的な芝居臭さが目立つ。
意欲作だが、歪な映画であることは否定出来ない。