Inagaquilala

止められるか、俺たちをのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

止められるか、俺たちを(2018年製作の映画)
3.7
「牝猫たち」(2016年)、「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017年)、「孤狼の血」(2018年)と、このところコンスタントに印象に残る作品を発表している白石和彌監督。荒々しい手つきで人間の心理を描き出す技は、当代随一かもしれない。その白石監督が自らの出身先でもある若松プロダクションの全盛期を描いた作品。いつものシリアスなタッチはここでは使わず、どちらかというとコメディのように、自らの師匠である若松孝二の若き日の姿を描いていく。

60年代から70年代にかけての若松プロは、ピンク映画の製作から徐々に抜け出しつつあり、一般映画やドキュメンタリーへと、手を広げていた。若松孝二を演じる井浦新が、どうみてもコミカルな演技を展開しており、これがこの作品のコメディ色を強めている。当時の時代を知る者には、なかなか興味深いエピソードが次々と展開していくが、若い観客はどんなことを、この作品から感じるのだろうか。若松プロの頭脳であった足立正生を演じる山本浩司がいい味を出していた。いつもの白石監督の作品とは、ちょっとテーストの違う異色作。
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