十一

ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島の十一のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

細田監督の手がける、大人も戦慄する、ホラー映画。
仲間を持つことの喜びを謳うワンピースにおいて、仲間の絆を否定してのけた怪作。
仲間を生かすために亡者と化した男爵は言うに及ばず、全身に矢を受け、それでも仲間を求めて立ち上がるルフィのおぞましさも大差ない。麦わら海賊たちが仲違いする姿は心が痛むし、だからこそ、仲間を失うことのつらさを語る男爵の言葉が説得力を持って突き刺さる。
この作品において、仲間の絆は呪縛として描かれる。
だからこそ、仲間を取り戻す最後のきっかけが、新しい仲間を作るという結論になるのだが、本作の不気味さはそこで止まらない。新しい仲間の力を借りても、結局男爵には力及ばない。最後にルフィを救ったのは、一族経営の冴えない海賊の父親なのだ。
つまり、この作品は、仲間の絆という呪縛を、家族の絆が断ち切るという物語なのだ。
ワンピースの根幹を否定するこの所業。大人の事情もあったろうに、相当な心的エネルギーの鬱屈があったのではないかと想像する。
思えば、「未来のミライ」で見えた、我が子への過剰な家族の絆への期待も、このような他者と関係性に対する絶望の反動としてたどり着いたものだとしたら、どうか。
「サマーウォーズ」でネットの善意を描く前に、「デジモン」では、全く同じ表現方法で悪意を描いていた。美しい人間賛美の裏には、同じだけの人間不信が潜んでいるのではないか。
他者との関係性を否定した先に、家族愛が語られるのだとしたら、それは非常に危険なことではないか。
十一

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