賽の河原

若おかみは小学生!の賽の河原のレビュー・感想・評価

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
4.0
何かの機会で予告編は拝見してたんですけど、「文科省選定!」みたなのを前面に出しててアニメーションの質感も子ども向け感あったんで、「国がプッシュして『ニッポンの伝統!』『おもてなし!』の映画かよ...w 1ミリも食指が動かんわ...w」ってナメてたんですけど、公開してからの評判がすこぶる良いということで観てきたら素晴らしかったですね。#最高 #なぜ観る前にイキるのか
前提知識ゼロで観に行ったんですけども、この絵柄から繰り出されるストーリーがいきなり凄えハードっていうw
「えっ...こんな話なんですか...」ってくらい重い展開が何の前触れなく序盤にドーンと来るんですよね。この「前触れなく突然の...」っていうシーンの恐ろしさとか禍々しさがね...「あっ...もうどうすることも...」っていうリアルな恐ろしさでね。ビビりましたわ。
んでいきなりそういうハードな展開なんでね、「ローテンションのトラウマ劇みたいなの見せられたらたまったもんじゃないな...」とか不安げに観てるとそこもツイストが効いてて、この年代の子どもの話としては余りにドライに話が進んでいくんですよね。
それでもストーリーが進むあいだ、こういう映画としてはちょっと異常なレベルで「死」の匂いがするのがまた興味深いですよ。春の最初のエピソードもそうだし、幽霊も勿論、虫の死骸とかっていうちょっとしたチャームも含めて死を連想させるイメージが凄いw 序盤の「えっ?」っていうドライさと対比をなしてるわけですよね。
だから言ってしまえば、とんでもない悲劇に見舞われた主人公のおっこちゃんが、カギカッコつきの「若おかみ」として奮闘している姿を観ていると、その健気な姿がちょっとサイコパス的というか夢遊病者というか、俺らが今観ている映画は何か悪夢のような幻想なんじゃないかっていう風にも見える。
それは勿論、作り手側の計算通りで、中盤以降におっこちゃんはそれと向き合いカギカッコ抜きの若おかみに成長するって話でぶへぇ...っていう
アニメーションのクオリティも高いですしね、脇を固める登場人物も凄く魅力的ですよ。基本の絵柄は子ども向けアニメーション感あるのに、夏のエピソードで出てくるグローリー水領さんとかね、これはもう萌えなのか百合なのかよく分かんないですけど魅力的なキャラクターですよね。
そういう意味ではおっこちゃんのライバルキャラのピンフリさんのセリフの末尾で偉人の格言の引用ギャグも素敵ですし、このピンフリさんの造形も「一見スネ夫みたいなやつと見せかけての努力家」みたいなのも好感持てますし、もう多分これは大人にしか分からないところですけどピンフリさんが読んでる本がユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』とか笑いますし、教室の習字の頭おかしさとかも最高でしたね。
『茄子』シリーズは演出とかは凄いけど話はそこまで(というよりも自転車ロードレース俺が好きすぎ問題)...と思っていた高坂希太郎監督に吉田玲子さんの脚本があまりにうまくハマっていて「むしろ原作はどうやってたわけこれ?」って感じで面白かったです。公開規模がここから広がるかは微妙だと思いますけど頑張って欲しいですね。
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