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バーニング 劇場版のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.0
【ギャッツビーになれなかった者は...】
村上春樹の『納屋を焼く』がまさかの映画化。『ペパーミント・キャンディ』の製作に携わったNHKが、『ポエトリー アグネスの詩』以来永い沈黙を貫いていたイ・チャンドン監督の心を動かし、村上春樹の小説に挑ませた。

カンヌで上映されるや、批評家に絶賛され、国際批評家連盟賞を受賞した。私の友人も「今年ベスト1」と言っており、期待値高めで観た。

非常に不思議で歪な映画だった。原作を読み、論文まで読んだ上で書評を書いた私にとって前半2時間まで、「過大評価されすぎなのでは?」と思った。

「私」がパントマイムをしている「彼女」と出会う。「彼女」はアフリカに行き、新しい「男」を引き連れて帰ってくる。「男」から《納屋を焼く》という趣味を告白される。「私」は次に「男」が焼く納屋を探すが、見つけられず、「彼女」は何故か消えてしまう。しかし「男」は「納屋は焼いたよ」と言い出し、何が何だかわからなくなる、、、

これを忠実に、じっとりじっとり、3歩進んで2歩下がるテンポで描く。特に、「男」が「私」に告白する場面には多くの時間を費やします。なので、睡魔が襲ってきたのは確か。また、本作ならではの要素もなかなか意図が読めず、そしてフォークナーや『華麗なるギャッツビー』という原作を読み解くキーワードも記号的にしか配置されない。これは私に合わないか、、、そう思った矢先、本作は牙を剥く。『納屋を焼く』のその先にて、イ・チャンドンの鋭い解釈が提示され、すべての伏線が繋がっていくのだ。猫、2大の車、部屋とアクセサリーetcこれらの意図が分かった瞬間鳥肌がたった。

ネタバレになるので、この辺でやめとくが、イ・チャンドンは『納屋を焼く』を「ギャッツビーになれなかった者の苦悩」と捉え、終盤40分で驚きの演出を魅せた。なんなんだこの鋭さは!全く衰え知らずなイ・チャンドンにビビりました。

多分ハルキストも納得な一本となるでしょう。

ブログ記事:【釜山国際映画祭・ネタバレ】『BURNING』イ・チャンドンは村上春樹の原作を『華麗なるギャツビー』と解釈した↓
https://france-chebunbun.com/2018/10/16/post-17185/

ブログ記事:【ネタバレ考察】『アンダー・ザ・シルバー・レイク』と『BURNING』は同じ映画だった!↓
https://france-chebunbun.com/2018/10/17/post-17353/

ブログ記事:【ネタバレ考察】『納屋を焼く』NHKドラマ版、『バーニング 劇場版』と併せて観て謎が分かる!↓
https://france-chebunbun.com/2018/12/30/post-18156/

ブログ記事:【ネタバレ】『納屋を焼く』イ・チャンドン版を観る前に村上春樹の原作を読んでみた↓
https://france-chebunbun.com/2018/10/01/post-17134/
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