リアリティとフィクションの混ぜ方が絶妙 隔絶された村に対して都市という存在、そして貧困のリアル 聖人のようなラザロの、復活のフィクション 鑑賞後の、寂しさも充足感もある、凪いだ不思議な気持ち
冬。聖人は狼を探す旅に出る。
貧しい村の純朴な青年 都合のよい働き者 侯爵夫人は村人たちを搾取し、村人たちはラザロを搾取する ラザロは人を疑わない みんながラザロの名を呼び、彼に仕事をさせる 隔絶された村だから学校もない 「ピッポ、お前の母親な自殺したよ お前が嫌になったから」とかいかにも楽しげに嘘をつく村の女たち びっくりな倫理観 村人の質素な服に対して金の勘定をする男や、侯爵夫人、その息子の服まるで都会的 村人は彼ら…自分の上に立つ人間をじっと見つめる 不服そうに従ったり、従わなかったりする(子供からミラーを取り返せ!には従わない) タンクレディかっこいいな 黒くてロックな服を着て、野外で寝泊まりしていてもなんだか王子様みたいだ 母親のやり方に疑問を覚えるお坊ちゃん 王子様は周囲からちょっと浮いたラザロを気に入り、半分血を分けた兄弟だと話す 騎士はパチンコを賜った 乾いた水路をふたりが歩くカットが良い 村の外からやってきた警官が話す真実に、村人は戸惑い怪訝な顔を向ける ラザロだけが崖から落ちてしまってバスに乗れない 広大な自然、岩山の美しさ
後半は寓話のよう 『ラザロの復活』を下地にしているようだ あの高さの崖から落ちたら死ぬはずだ 幽霊になった、もとい、復活したラザロは当世のほんとうの姿を見る ラザロはどれくらい眠ってたんだ 村はがらんとして、屋敷には絵の描かれた天井にまで蔦がびっしり 貧しくはあったが人の熱があった村は、寂れて風化している 歩き、初めて目にするものに無垢な眼差しを向けるラザロ かつての同郷たちに再会するが、彼以外はみんな歳を取ってる 何年くらいなんだろう、タンクレディの犬は老犬になったが生きてるとして、せいぜい15年とか?髪が白っぽくなって後ろでひとつに結んでるタンクレディも良い 村人たちはかつての領主様の家をイメージして高いお菓子を持っていくが、都市において、財産を銀行に没収された彼の生活もそこまで豊かではない みんなで車を押す中、彼は立ち尽くす 都市の中、みんなだけがラザロを置いて先を歩く 感情の読めない無表情か、にっこり笑うだけであったラザロが涙を流すシーンはどきっとする ラストがとんでもないな 泥棒と罵られ蹴られてもなお彼は無垢だ 資本主義に染まらず、人との繋がりにだけ心を動かす彼は幸福 反語っぽくもある 「幸福な王子」と同じ意味の幸福
イタリアへ旅行に行ったとき、バチカンの付近で金を乞う身障者を見かけたのを思い出した カトリック関係者を含め道をゆく人みんな彼女を無視している あとで調べて知ったが、そうして金を乞うてる人々には元締めがいて、彼らは1日が終わると車が迎えにきて郊外へ帰るそうだ 徴収した金はマフィアに流れていくと 全ての人がそれに当てはまるわけではないだろうが、貧困かつ他者を騙そうとしている ラザロであればその人々の訴えに寄り添うのだろうとぼんやり考えた