冷戦下のポーランドで出逢ってしまった亡命したピアニストと民族舞踊の歌姫の儚い恋。
時代が悪く、愛し合っていても共に過ごす事ができずにすれ違い続ける事で互いの愛が積み重なっていく。
フランス人でもないポーランド人でもない。
祖国を裏切った人間として居場所を失ったヴィクトルはズーラと共に亡命することを願うが、それは叶わない。
私は未熟だからと彼女は言った。
よくある『スター誕生』的な煌びやかな物語になるはずもなく、激動の時代に愛し合う2人には一体何が残されてるのだろうか?
作品は洗練された美しいモノクロ映像で綴られておし、構図や光の入れ方も含めて芸術的な事で2人の愛の形をより一層重厚感のあるものにしている。
無駄な台詞は極力抑え、この作品に奏でられる音楽の素晴らしさについても忘れてはならない。
過酷な運命を描いたお話ではあるが、ズーラの歌う魅力的なスラブ音楽をはじめとして、ジャズやアメリカンポップまでも幅広いジャンルで歌をとことん堪能できるので、音楽映画が好きな人には是非お勧めしたい作品です。