いののん

アメリカン・アニマルズのいののんのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
3.8
飛ばねぇ鳥は ただの鳥だ



まず、この題材で映画をつくろうとしたことに感服する。この題材で、茶化さず、まじめに、映画をつくるということ。しかもスタイリッシュに。(特に始まり方が、クレジットの動かし方や配置やフォントを含めて、めちゃ格好いい。これから、特別な映画を観るのだという気がしてくる。)


大学生4人が、あまりにも杜撰な強盗計画を立てる。あれは、果たして「計画」と言えるんだろうか。頭の中でだけなら、それは素晴らしい計画だ。妄想でならいくらでもやれる。そんな計画もどきをたてるのは楽しい。映画ごっこもわくわくする。名前を、ピンクとかブラウンとかで呼び合うのは、「レザボア・ドッグス」でもあったけど、マネした彼らの風貌をみると、レザボア・ドッグズというよりも、「サブウェイ・パニック」のそれだ。


あまりにも場当たり的なお粗末さで実行し(うまくいかないと、どんどん怒鳴り合ってしまうのは、みていて辛い)、そして、結末にいたる。もしもこれがニュースで流れたら、きっと私は、ばっかじゃないのと冷笑し、次のニュースをみている頃には、もうこの事件を忘れてしまうのだろう。彼らと私との間に、そんなに大きな違いはないのかもしれないのにね。


当事者にとっては、お粗末じゃないし、被害にあった方にとっても、消えない傷が残る。なぜこんなことになってしまったのだろうか。ご本人登場によるご本人の語りと交差させながら、物語が進行する構成もナイス。


2つのシーンが私にとっては印象的だった。

①ひとつは、勃ってなくて座ってるバリー・コーガン君が(しかも女っ気ゼロ)、自画像の眼に穴を開けるシーン。眼の奧には、空洞しかない。

②そして、もうひとつが、寄せ集めたかのような大量の新聞紙を背景に、ちぎり絵のような大きなフラミンゴが勃っ、じゃなくて立っている場面。ブリコラージュという単語には、「寄せ集めて自分で作る」の意のほかに、「繕う」「ごまかす」という意味もあるらしい。寄せ集まっても、繕いきれなかった4人。音楽のことも詳しくないのに言っちゃうが、格好いい音楽が次々と流れるのにもかかわらず、どれもブリコラージュ(ごまかす、の意)的で、茶番に感じたけど、それはあえて狙ってのことだろうか。CANのビタミンCは、「インヒアレント・ヴァイス」を最近観たので、うれしかったです。



*「レザボア・ドックス」も「サブウェイ・パニック」も「インヒアレント・ヴァイス」も、全部この半年くらいで知ったこと。


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オーデュボン? 
なぜ私はその単語を知っている? 
そうだ、伊坂幸太郎の本だ!


伊坂幸太郎の本は好きで、わりと読んできたとは思うのですが、どういうわけか、『オーデュボンの祈り』はどうしても読み進めることができなくて、挫折したままとなっています。今なら、読み通せるかな。ここで宣言ばかりしていると、自分で自分を窮屈にさせてしまうから、読みますと書くのはやめておこう。笑
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