ねじまき映画館

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のねじまき映画館のレビュー・感想・評価

3.5
三浦春馬演じる田中は、自分のことを「偽善者」だと言った。確かに彼は偽善者だ。

なぜか。

彼は、美咲とのデートの約束があるにも関わらず、鹿野に夜のボランテアを頼まれたとき、断らなかった。

彼は、鹿野が美咲をデートに誘いたいと言った時、手紙を代筆してやり、美咲にデートに行ってやって欲しいと頼んだ。

彼は、自分の彼女を鹿野に差し出したのだ。


それは、鹿野が障がい者で、自分は世話をする立場という意識があったからだと思う。
鹿野が健常者だったら、絶対こんな行動はしない。


彼の行動は、一見優しさのようで、実は障がい者を差別している。健常者だったらしないことを、障がい者にしているのだから。


だけど、きっと私も、鹿野のような重度の障がい者に頼まれたら、必要以上に要求に応えてしまう気がする。


この人はかわいそうな人だから。
自分は健常者だから。
少しくらい我慢してあげよう。


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健常者と障がい者が対等な立場を築くとは、どういうことなんだろうか。

「少しくらい我慢してあげよう」というのは、健常者の傲りなのかもしれない。それは、実は、無意識の差別なのかもしれない。


その点、鹿野はすごい。彼のワガママは文字通り命懸けだ。
もしボラがいなくなってしまったら、彼は死んでしまう。それを知りながら、ワガママを言うのは、とても勇気がいることだ。

健常者と障がい者が真の意味で対等になるとは、こういうことなんだと思う。

友達に遠慮はしないはずだ。
遠慮しない仲が友達のはずだ。


差別をなくそう、と口で言うのは簡単だが、障がい者に気を遣いすぎて、逆に差別することになっていないか。


これが実話というところに、本作の凄みがある。

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このシリアスなテーマを、大泉洋の絶妙な演技で、エンタメ的にも十分見やすい作品に仕上がっている。

また三浦春馬については、正直ただのアイドル俳優だと思っていたが、田中の葛藤を自然な形で表現しており、とても良かった。

いつのまにか演技派俳優になっていたんだなぁ。


公開:2018年
監督:前田哲
出演:大泉洋、三浦春馬、高畑充希