ペイン

読まれなかった小説のペインのレビュー・感想・評価

読まれなかった小説(2018年製作の映画)
4.5
『ゾンビランド:ダブルタップ』からのこれですからね…流石に高低差ありすぎて耳キーンってなります。

ニーチェ、ドストエフスキー、チェーホフらの名作に捧げられた実に私小説的な作品。

最近はますますこうした紛れもない“映画作家”の3時間オーバーの大作は劇場での回転数の悪さ等を含め煙たがられていると思いますが、とはいえやはりたまにこういう作品をじっくりと腰を据えて思考を促し観る時間は実に贅沢で有意義だなぁと先日『地獄の黙示録』を観た時と同様思った次第です。


傑作は冒頭のファーストショットから違うとはよく言いますが、まさに本作はそれで、港の海が反映するガラス張りのカフェで佇む男を捉えたショットが素晴らしい。また、その後もトルコのトロイ遺跡近くの片田舎を捉えた美しい日常風景、広く奥行きを感じさせるカメラも絶品。


また、インテリ的自意識の脆さや醜さを容赦なく暴くヒリヒリした議論、口論の連鎖や要所の飛躍や省略も効果的で、長尺を感じさせない。意外な着地にも胸が熱くなりました。


監督の前作にしてカンヌ映画祭パルムドールを受賞した『雪の轍』ほどまでは洗練は感じなかったものの、やはりこの監督好きだなぁと再確認した傑作。




以下、劇中印象に残ったセリフ書き残し



「“自意識過剰だと気づいた時、なぜ僕らは傷つく?むしろ悟りと捉えるべきでは?人はそれぞれ何かを信じてる。愛や美を信じるように別れを認めればいい。そして心の準備をする。決裂と別れは、すべての美しいものに潜む。だったらいっそ、それらの試練を前向きな打撃と捉えれば、謎を解く助けになるのでは?”」
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