読まれなかった小説の作品情報・感想・評価・動画配信

「読まれなかった小説」に投稿された感想・評価

un

unの感想・評価

4.2

このレビューはネタバレを含みます

コーランの解釈のくだりが、意味を見出せなくて苦行だったが、その分も含めて3時間の長さが最後の感動を生んだ気がする。
道草

道草の感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます

シナンはチャナカレの大学を出て故郷のチャンに帰ってくる。ムハレム(父親の教師仲間)と久しぶりに会う。ムハレムはシナンの父に金貨三枚を貸していて、早く返すよう伝えといてくれと言われる。
シナンの父は競馬や動物の飼育に金をつぎ込み、他のところではとてもけちである。
シナン、シナンの父、祖父の三人で井戸堀をする。シナンの祖父は、息子が水脈を見つけようとしているのを無謀だと言い、その上サボっている息子を見て怒って帰る。
シナンは祖父母(母方)を訪ねる。お金を助けてくれた礼をする。祖父母のもとにもムハレムが借金の請求に来ていたという。
シナンは町長を訪ねる。自分の本の出版のため出資してほしいと頼む。観光や歴史関連なら出資できるが、個人の回想録では法的に援助できないと断られる。町長はイルハミを頼ってみるといい、とシナンに言う。
シナンはイルハミを訪ねるが、月曜までいないと言われ出直す。
シナンはハティジェと再会する。これからどうするのか聞かれ、シナンは町を出て教職か兵役かだと言う。ハティジェは、この世のすべてが美しくまた近いようで遠い、と言って泣き出す。彼女は宝石商の家に嫁に行くらしい。木陰でハティジェはシナンにキスをする。
シナンは湖畔でハティジェの元彼、ルザと話す。ルザのハティジェに対するコンプレックスに触れ、掴み合いの喧嘩になる。
シナンは教職の試験を受ける。その帰りに古い戸棚で見つけた本を本屋で安く売る。本屋には作家のスレイマンがいた。シナンは彼に話しかける。観念的で冷笑的なシナンの態度をスレイマンはたびたび諌める。
シナンは教員クラブではなく、ギャンブルの胴元の店に来ていた父をなじる。家に帰って、母親と話す。彼女は夫が昔は優秀な教師であったことを嘆く。それでも彼女はシナンに、他の家よりは状況がましであることを強調するが、シナンは父が胴元の店に行ったことを勢いでばらしてしまう。
シナンは出版のための700リラを上着のポケットに入れておいた。少し目を離すと少なくなっていた。家族を疑ったシナンを、妹のヤセミンは非難して喧嘩になる。
シナンはイルハミに会う。イルハミは金持ちだが、面の皮の厚い人物だった。シナンとは話が噛み合わない。
シナンは父親と仲良くしているという、同級生のエクレムと話す。父親と仲良くするなと言うが、彼は聞く耳をもたない。
シナンは父から井戸堀に誘われるが、父さんの「ショー」にはうんざりだ、と言って断る。シナンの祖母はヴァイセル導師が、肉体的にまともにできない夫にスピーチを頼んだことを怒っていた。また、導師が夫から借りた金を返さないことをシナンに教えた。
シナンの父は、盗まれたシナンの金についてなぞかけをする。シナンは父が盗んだという答えだけは口に出せずにその場を去る。
シナンはリンゴを盗み食いしているヴァイセルに話しかける。ヴァイセルは改革派のナズミと論争になる。三人は宗教、運命、技術、個人の真理、などについてそれぞれの意見を交わす。
シナンは学校へ行き、父を訪ねる。電気代が止められるので、きょう入るはずの補修手当をくれと言うと、父は、まだ入っていない、と返す。
シナンは母に出版した本を渡す。母へのメッセージを見て、彼女は涙を流す。シナンは父が競馬の紙を持っていたと、母に言ったが、父によるとそれはいなくなった犬を探してもらうためのポスターだった。父は確かではないことを母に密告したシナンを責める。
シナンは東部へ兵役へ行き、帰ってくる。シナンの本はほとんど雨で濡れ、母と妹は本を最後まで読んでいなかった。退職した父は家にはほとんど帰らず、祖父の家で作業をしていた。本屋に行くと、シナンの本は一冊も売れていなかった。
父の部屋を訪ねると、父の財布があり、その中にはシナンが本を出版したことを報道する新聞の切りぬきが入れてあった。
シナンは父が建てた小屋を訪れる。父は羊を飼って暮らしていた。井戸はいくら掘っても水がでなかった。父はシナンの本を最後まで読んでいた。
シナンは井戸の方を見る。井戸のロープで首をつるシナン(のイメージ?)。父が起きると、シナンは水が出ない井戸を掘っていた。
トルコ映画、ちょっと長いが映像が美しく、セリフも知的であっとゆう間に観れた。
ギャンブルにはまりどうしようもない父親、自分の視点でしか物事をみない一人よがりの息子。父親を今の自分、息子を昔の自分に投影。
歩きながらのイスラム教に関する議論、橋の上での文学論など、言葉が行き来するするシーンが妙に印象に残る。特に、たぶんに自分の設定と似ているせいか、最後の親子二人のシーンはこころをうつ。
やっぱりこの監督の作品の良さが自分にはいまひとつ分からない……。映像的な魅力に乏しいように感じてしまうし、会話劇としても例えばアスガー・ファルハディの作品のような牽引力が無く、それこそ映画ではなくて小説で良かったのではという疑念が拭えない。
頭でっかちでマウント取りたがりの主人公が愛おしくて仕方がなかった
景色が美しい『雪の轍』よりも身近なテーマなのでスッと入り込めました。

シナンの過剰な自信と痛さ…
色々と胸に刺さり思い出して痛い。
国も環境も話す内容(宗教)も全く自分とは違うのに普遍的な部分が刺さりまくる。
井戸と犬のシーンはドキッとした。
一人旅

一人旅の感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作。

前作『雪の轍』(14)がカンヌ映画祭パルムドールを受賞したトルコの鬼才:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督最新作で、トルコの農村部を舞台に父と息子の軋轢と相互理解を3時間超の長尺で描いています。

大学を卒業したばかりの小説家志望の青年:シナンが、トロイ遺跡近くの故郷に戻ってきた。父親のイドリスは定年退職間近の小学校教師だが、競馬に明け暮れ借金まで抱えており、家族の暮らしは貧しかった。シナンは、父親と同じ道を歩みたくないと思いつつも、とりあえず教員採用試験を受けることに…という、父と息子の関係性の行方を描いた普遍的なテーマとなっています。

“負け犬”に転落した今の父親に対する軽蔑と反感を募らせている息子と、懲りずにギャンブルを続け家族を苦しめてしまっている父親の父子関係を、母親と娘その他周囲の人々との関わりや息子が見るいくつかの幻想風景と共に描いた人間ドラマであり、若さゆえの未熟(根拠のない自信と上から目線、父親の表層的な部分のみへの着眼)から抜け出せない息子の硬直した心境と、息子からの軽蔑の眼差しを静かに受容する父親の悲哀を描いて、父子の確執と無理解の有り様を浮かび上がらせています。そして、息子が執筆した自伝的内容の処女小説への父親の真摯な向き合い方(母娘のそれとは明白に対照をなす)が決定打となって、息子の心境の変化と長らく凍結していた父子関係の雪解けがもたらされていく様にホッと胸をなでおろすと同時にずっしりとした深い感動を体感させてくれます。
 
また、トルコ北西の都市チャナカレの風景はコロナ禍が無ければ夏休みに足を運んでみたくなるほどの美しさを誇っていますし、静謐な作風ながら挿入曲のバッハ「パッサカリア ハ短調 BWV582」が息子の心境と共鳴する効果的な使用となっています。
ら

らの感想・評価

3.8
やっぱりジェイラン好きだ。本作もまた例に漏れず映像表現が美しい。『雪の轍』にはやや風格で劣るかもしれないけれど、心血注いで書き、ようやく出版まで漕ぎ着けた小説を誰にも読んでもらえないシナンの切なさや、他人事とは思えない家族との関係性には普通に感情移入してしまった。脚本はこれで良いのかなあと思わずにいられない部分もあるけれど…。
H

Hの感想・評価

-
小分けに見る程度にはこの主人公を3時間もみているのがかなりしんどかった。特に同級生と会話するシーンは、不意打ちのショットが効いて印象的。
最初はちょっとつまらないのが会話でだんだん面白くなるのが、個人的には今泉力哉と同じだった。

別れと決裂は全ての美しいものに潜んでいる
 ヌリビルゲジェイランらしい濃密な会話と絶好のロケーションで見せる親子の物語。映画における会話でこれほど面白いものはない。
 親子の諍いから文学とは何か、コーラン解釈と実践についての議論まで、知的で非常に充実した内容で飽きずに見ていられた。
 シナン青年(髭が濃くて我々日本人には青年に見えない)の溢れんばかりの若気とナルシシズムが目も当てられないほどの惨事を引き起こしていてかなりキツいのだが、鼻で笑う感じとか人を見下した態度がありありと表れていて凄まじい。何かにつけて「理解されない」とか言ってしまうんだが、こっちまで恥ずかしくなってくる。他山の石。
 地元の作家先生に議論をふっかけようとするところなんかは「10分で人をイラつかせる方法」とでも言うべき面白さ。
 自分が恵まれていることに気づけない「若さ」は、シナンがちょっと玄関先に出て戻ってくるまでの間に、謎の社会派ギャング映画?を見て母親が感じ入るシーンに端的に表れている。
 やはり人間を成長させるのは挫折体験以外にないのかもしれない。自費出版で出した本が一冊も売れず、母や妹にも「忙しい」とかなんとか言われて読んでもらえず、在庫は実家の隅でカビが生えている。オブジェクトが帯びる悲壮感が半端ではない。父親だけが読んでくれていることによってなんとか和解するという展開も、父親がすでに乗り越えるべき存在ではない非オイディプス的な現代に描かれるドラマとしては申し分ない。強いて言うなら兵役と青年の挫折感がそれまでの長さに比べてほとんど描かれていないと言っていいくらい薄いのは気になった。
 二人の導師と話すところが1番のハイライト。作家先生とは違いシナンに対して寛大で、その懐の深さを見せつけており、イスラーム的知性を肌で感じた。
>|

あなたにおすすめの記事