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「読まれなかった小説」に投稿された感想・評価

sugar708

sugar708の感想・評価

4.1
過剰な自尊心を持つ全ての若者に贈る、現実と向き合うことの大切さを文学的かつ哲学的な対話で描いた作品。

多少問題はあるがここまで育ててくれた父を蔑み、周りの大人の意見に耳を傾けない、それでいて他者からの評価を恐れ、本当の意味で自身の殻から出る勇気はない。正直に言うと本作の主人公であるシナンのことを好きにはなれませんでした。

それは彼が若き日の自分と重なってしまい耳が痛くなるからだと思います。社会に出る前の子どもは自分は特別で何かを成し遂げることが出来ると思い込んでいる。しかし、社会に出て一番最初に気が付くことは「自分は凡人である」ことだと思います。

本作の主題でもある通り、何物でもなく見向きもされない“梨の木“と同じであることに。

田舎特有の閉塞感とエディプスコンプレックスのような心理によって父親の存在と遺伝子を拒むシナンですが、自分の長所も短所も、好きなところも嫌いなところも半分は父から受け継いだもの。人は時にそれを運命と呼ぶのかもしれません。そして、自分の一番の理解者はあんなにも嫌っていた父親だった。

美しい港町チャナカレと質素な村チャンの対比は彼の理想と現実を表し、その狭間で葛藤するシナンは夢を持つ全ての人に共通するのかもしれません。

自身が何者でもない凡人と受け入れてからどう生きるか。父と邂逅し運命を受け入れたシナン、要らぬ自尊心ともに一度死んだ彼の人生はこれから始まるのかもしれません。
akubi

akubiの感想・評価

4.4
『近くみえて遠い』人生。
ないものねだりをやめない、わたしたち。

あの木漏れ日の中の、この世界の片隅の刹那は、果てを夢見るどの場所より美しかった。

『哲学を装い、世界と自分から自分の弱点を隠そうとした。』

そうか。
未熟者の目に、青空がしみた。
林檎を齧った ひと は、そのときにはもうすでに後戻りはできなかったのだろう。

地球の中心にむかってぽっかりあいた穴ぼこへ堕ちてゆく。
その先の果てにあるかもしれない光を、求めて。
ゆ

ゆの感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます

アリ、井戸の件とか印象的だったんですけど、なにせ長い。
途中何度か集中力途切れました。
minorufuku

minorufukuの感想・評価

3.3

このレビューはネタバレを含みます

大学を卒業した主人公は実家に戻り、書き上げたばかりの処女小説な出版を目論んでいた。一方、彼の父は地元で教師の任についており、息子にも同じ道を歩んでほしいと考えていた。だが、父はギャンブルや見込みのない事業のために借金を増やすというだらしない一面も持ちあわせていた。父に反発し、主人公は小説出版の支援者を探すことに奔走するのだが......という話。トルコ映画。「雪の轍」でカンヌ映画祭パルムドールを受賞したヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作品。評判も良いので鑑賞。

芸術性は高いが、この内容で三時間とにかく長いと感じた作品。
哲学的な問答の対話劇のシーンが大半を占める作品で、父子の確執を描いて入るのだが、断絶するほど激しく喧嘩するわけでもなく、借金まみれの父を家族は生温かく見守っている。また、小説執筆の過程で主人公があらゆる人と問答を繰り広げるけれど、彼らの主張にあまり興味が持てなかった。まあ、そういうモヤモヤを三時間貯めこんだ後に訪れるラストシーンについては確かに静かで穏やかな気持ちになれたし、鑑賞後は心地よかった。結局息子も父と同じような人生を送ることを匂わせて終わる感じも良かった。
ただ、やはりこの結末に持って行くにしても長過ぎる。映画という媒体ではなくそれこそ小説の形のほうがこのテーマに合ってるのかもしれないと思った。
上着のポケットに大金入れたまま脱いではダメやで。
異国の日常が垣間見える映画は基本的に好みではあるのだけれど、この作品はさすがにチト長すぎた。話の骨格自体は悪くないのだけれど、その肉付けは私にはちょっと豊満すぎたかも。

その肉付けの部分は哲学的対話が大半を占めるので、好きな人にとっては惹かれると思うのだが、エンタメとしてはうるさく感じてしまったかな。

小説として読んだら面白く思えていたかも。
Yuya

Yuyaの感想・評価

5.0
170分間に散りばめた伏線を
ラスト10分に全て集約してしまう
完璧な私小説のように見事な映画
祖父 父親 息子 男として生きる
全ての人間の心に響く“言葉”が
ここには 綴られている

『昔々、アナトリアで』『雪の轍』
と立て続けに傑作を世に放ってきた
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督
ここにきて 一層に家族 親子という
最小単位の人間模様で またも生きる意味の答えを
小細工無しのロジックで 力強く説いてきたなぁ

あの…語弊があるといけないから
回りくどく言い訳しとくと
たぶん娘に対しては パパが甘くなる分
ママがちゃんと礼儀作法を躾るか
まぁ パパを毛嫌いして ママと対話を重ねるか
で 万事丸く収まるものなのかなぁ…と勝手に思うわけでさ

ただ これが息子の場合 男同士だと
まずは母親や姉や女性親族には
根っからの母性があってさ 簡単に甘くなるし
何より どんなダメ人間でも 許して支えてしまう
ナイチンゲール・シンドローム的な感覚があるじゃん
ま ここでそれに甘んじて それ以外の人間とは
対峙せずに逃げ隠れして 反対意見や自分自身と
向き合わないなら それまでなんだけど
社会の中で自立して やがては家族を形成するような
一人前になる為には 真正面から挑んで
乗り越えないといけないのが父親だったりもして
しかしながら いかんせん女性のように
なんでも言葉で語り合えるかって言うと
そうもいかないから 難しいんだな

この主人公も むしろ父親や人気小説家と
積極的に議論を交わし 自分なりに賛否の判断を下して
自分の人生を自分で前に進めてる感はあるんだよね
当然そこには 若さやすれ違いによる
葛藤やわだかまり 誤った解釈があったりもするけど
自分も父親も家族も人生すら
全てを俯瞰して見直した時
“自分の本質を見つめていたのは誰か”
“誰が何を自分に求めていたか”
そして “生きる意義の本質”に
彼なりの答えを導き出した ラストシーンの行動に
180分間かけて涙腺に溜めてきた 涙が溢れ出てしまった

うん こうゆう映画に数年に一回でも出会える限り
いやぁ こうゆう瞬間の為に 日々映画を観続けてるんだろうなぁ 結局のところ
ゆうゆ

ゆうゆの感想・評価

4.2
自分の目に映るものだけの判断で
父親に苛立ち 衝突しながら、
若者特有の青さを撒き散らして
さまざまな人達と一方通行気味に語り合い
彷徨う息子

場面転換毎に流れるバッハの旋律。
片想いだった女性との
煌めく林のシーンにうっとり✧︎
美しい彼女が詩的に理想と現実を語る
シーンが、たくさんあった会話場面の中で
いちばん好き

"親の心 子知らず"
シナンの長い語り合いの末、辿り着いた
旅のゴールには
彼をあたたかく受け容れ続けた
父の無償の愛が…。

出ない水を求めて井戸を掘り続ける父親と
誰からの需要もなかった自作小説を
必死でアピールし続けた息子。
どんなに抗っても
ふたりには同じDNAが深く刻まれている…。

"歪な梨の木" の実は
おそらく似た甘さなのだろう。
それをようやく悟り
身をまかせるシナンの姿。
あの3時間という長さの中、
そのラストシーンに
感動のすべてが集約されていた

70点
218

長さを感じないくらい入り込んで観てた。梅雨時しっとり観るにはとても良い。
NICE

NICEの感想・評価

4.2
Ahalt Agaci
The Wild Pear Tree
=野生の梨の木🍐

『雪の轍』よりさらに進化したヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の会話劇。

歪な人間=野生の梨の木🍐

失恋の痛み、自分の不甲斐なさ、成功者への嫉妬、父への自己投影と嫌悪感…
現実に潰される青年&ダメダメな父。
2人の野生の梨の木🍐
捻くれ者の居場所は何処に…?

ストーリーとは特に関係無いようにも見える会話の数々が、最後にはひとつに繋がるミラクル。

野生の梨の木が落とした実が、美味しいこともある。
chico16

chico16の感想・評価

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「THE WILD PEAR TREE」(英題)、「AHLAT AGACI」(原題、トルコ語正しいスペルが書けない)って、なんと妄想が広がるタイトルだろか。
邦題の「読まれなかった小説」も、なかなかだと思います。ものすごい言葉の多さ。
「親の心、子知らず」ごめんなさい。
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