とえ

天国でまた会おうのとえのレビュー・感想・評価

天国でまた会おう(2017年製作の映画)
4.0
第一次世界大戦の終了間際に、顔に重傷を負ってしまった青年が、戦後、パリで企てた前代未聞の詐欺についての物語

主人公の青年エドゥアールは、戦争で顔に重傷を負ってしまったため、そのほとんどが仮面を被った姿で登場する

そんなエドゥアールは、戦争で命を落とした「名前のない犠牲者たち」を象徴している

そこでエドゥアールは「戦没者を慰霊すること」を装った詐欺をするのだが、その行為そのものが、犠牲者たちの思いを代弁している

日頃、戦争にも、犠牲者にも無関心なくせに「犠牲者を悼むため」というと、溢れるほどに金が集まるのだが、それは、金持ちの偽善と見栄でしかない

そして、本来なら、戦争を計画した者や、ゴーサインを出した者が罰せられるべきなのに、彼らはケガをするどころか、誰よりも贅沢な暮らしをして生きている

この映画は、そんな戦争の欺瞞や理不尽への皮肉であふれている

戦争で体の一部を失われた人間が苦しい生活を強いられ、逆に酷いことをした人間が贅沢な暮らしをしているのはなぜなのか

そして、この映画の素晴らしいところは、そんな眉間にしわを寄せたくなるような話を、とても美しく華麗に、観客に苦痛を与えず、寓話的に描いているところにある

表面的な美しさの裏側には、苦しみが内包され、悪事を行なった人間には、やがて天罰がくだる

戦争とは、人を殺す以外に何の目的があるのか
美しい映像と共に、その理不尽さについて、考えさせられた作品だった
とえ

とえ