ベルベー

青の帰り道のベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

青の帰り道(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

紛れもなく青春映画なんだけど普通の作品とは一線を画すハードさ。藤井道人の現時点での最高傑作はこれだと思う。後半息切れを感じないでもないが、そんなことよりも熱量が凄い。

2008年からの10年。そこを切り取った映画って、あんま観たことないので新鮮に感じた。「寝ても覚めても」が設定的にはそうか。とにかく、この10年というのは自分にとって青春時代だったわけで。そこが包括されるようになったのは不思議な気分。

その10年。リーマンショックがあって東日本大震災があって…90年代と比べるのも野暮だけど、後から見て「いい時代」と言われるような時代ではないんだろうな。そんな時代に振り回される若者たち。それはそうなんだけど、でも「時代の所為」っていうのはこの映画の本質ではないと思う。この映画が描きたかったことって、どの時代でもどの国でも通用する、もっと普遍的な葛藤、苦しみ、そして希望ではないのか。と、たった3年で地獄のような2020年代を生きてみて、尚更そう思う。

だから藤井監督、政治的な監督ってわけではないと思うのです。「新聞記者」が良くも悪くも一人歩きしているような…もっとエンタメ性を持って、社会にメッセージを提示できる良い監督なんだと思うけどな。特定の政党や主張へのプロパガンダで収めようとするのはあまりに才能の無駄遣い。もっと根源的な何かを描ける人。

閑話休題。とにかく印象的なのは出演者の素晴らしすぎる演技の数々です。「この人こんな芝居するのか…!」という驚きの連続。ただ純粋に音楽を愛していたはずなのに、自尊心が捨てられず、そこに罪悪感まで入ってきたことでどんどんボロボロになっていく真野恵里菜。眼鏡の芋っぽさと上京してからの垢抜けた感じのギャップが良いんだけど明らかに危うさを含んでて、やっぱりDVの餌食になってしまう清水くるみ。いつも他人の所為にして不機嫌でクズヤンキーを地でいく横浜流星(すぐに手が出る感じとガン飛ばす眼がガチすぎます)。本作のMVPかもしれない、死ぬ間際の微笑みが何を表しているのか…どうとでも取れるのが恐ろしくて切なくて寂しい、本当に素晴らしいとしか言いようがない森永悠希。

あまりに辛くて観ている間何度も気持ちが折れそうになったんだけど、でも最後は救いで終わる。ボロボロ泣いた。amazarashiの主題歌がまた、反則レベルで美しい。
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