回想シーンでご飯3杯いける

青の帰り道の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

青の帰り道(2018年製作の映画)
3.9
社会派作品として話題になった「新聞記者」の藤井道人監督が手掛ける辛口の青春映画。冒頭こそパケ写の世界そのものの爽やかさであるが、どんどん激しい方向に展開して、心をえぐられる。

東京近郊の街で暮らす7人の高校生の、卒業から5年間を描く。上京してミュージシャンを目指すカナ、彼女との音楽活動を夢見ながらも大学受験に失敗するタツオ、大学を出るもブラック企業に就職してしまうユウキ、地元で早々に出来婚するコウタとマリコ等、、、。民主党政権時代の社会背景を挟みながら描かれる彼らの生活は、決して順風満帆とは言えないが、出演者のエネルギッシュな演技もあって、とても見応えのある群像劇になっている。

少し残念だったのが、東京の音楽業界等「大人の世界」の描き方がステレオタイプで、ドラマがチープに見えてしまうところ。これは「新聞記者」での内閣府の描き方と全く同じで、この監督特有の手法なのだろう。

そうした気になる点もある中、クライマックスで本作を見事に盛り上げるのが、amazarashiによる主題歌「たられば」だ。実は本作は出演者の不祥事があり、撮影が一旦中止になった経緯を持つ。恐らくはその段階で「たられば」のデモバージョンが監督に送られたはずで、以降に撮影されたであろう終盤のシーンでは、同曲の存在がストーリーにがっつり組み込まれているのだ。地方都市の視点から若者の葛藤を歌う作風で知られるamazarashiの音楽は、本作のテーマと見事にシンクロしている。

なお、amazarashiを敬愛する藤井道人監督と横浜流星は、この後、彼らの新曲「未来になれなかったあの夜」のMVで監督・主演として各々参加。本作に近いテイストを持つ内容になっている。