いののん

小さな恋のうたのいののんのレビュー・感想・評価

小さな恋のうた(2019年製作の映画)
3.6
歌には、ひとそれぞれの思い入れがある。なんてことは、当たり前すぎて言うのも憚られるのに言ってしまった。恥ずかしい。この歌がリリースされたのは2001年ということだから、平成を代表する曲のひとつ、といって良いのだろう。文化祭でのバンドの定番だったり、夏フェスで聴いたり、普段の何気ない生活のなかでみんなで一緒に口ずさんだり大声で歌ったりと、その都度、この曲に重ねてきた思いがある。皆様と同じく。そして、いろいろないきさつのなかで(中略)、わたし英語も喋られへんのにミャンマーの女の子が私のうちに2泊することになって、そんでお別れ会で、この歌を一緒にハモってうたうことになった。お互い言葉でうまくコミュニケーションをとれないなかで、この曲の練習が、ささやかだとしても私たちを繋いでくれるものだった。今、この曲が流れると、わたしは、そのミャンマーの○○○○ちゃんを想う。そんな前置きはさておき。


映画のわりと始まりにある出来事が起こって、そこからの展開のあまりの稚拙さに、これは携帯小説かと(携帯小説というものを読んだこともないくせに決めつけてごめんなさい)、これがずっと続くなら、わし途中で帰るべ、と思った。でも、初めてみる眞栄田郷敦という役者(真剣佑の弟なんだって!)が醸し出す雰囲気にも惹かれて、結局最後までみた。というより、最後の方には、とても良い映画を観たんじゃないか、という気持ちになった。これに、吉沢亮君が出演していたら、もっと良いのになあと、贅沢な妄想をしてしまったことは反省します。


フェンスの外側と、フェンスの内側。そうだ、この子どもたちには、何の罪もないんだよなあって。反対運動を起こす人と、反対運動を起こされる人。オスプレイを見上げる人と、オスプレイを操縦する人。沖縄の分断、この国の矛盾。いろいろあっても、その子どもたちに罪はない。フェンスで両者は隔てられている、でも、イヤフォンは国境を越える。音楽は隔たりを越える。私はあなたに届けたい、目の前のあなたにこそ届けたい。そのシンプルな思いの強さ。彼らの純粋さ。エンドロールでの写真も不意打ちで思わぬところを突いてきて良くて、甘甘の私は、ついうっかり、涙ぐんでしまった。こんなんじゃ私はダメだな。これから、モンパチのこの「小さな恋のうた」が流れたら、私は何を思い出すのかな。この映画のことも思い出すのかな。どんな風に思い出すのかな。ひとつおぼえたらひとつ忘れるんじゃなくて、記憶がどんどん積み重なっていきますように。時間が経過するのが楽しみになってきた♪
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