ノラネコの呑んで観るシネマ

魂のゆくえのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
4.6
恐ろしく地味だが、おそらくポール・シュレイダーの現時点での集大成。
戦争で息子を亡くし、妻にも去られ、古びた教会に一人暮らす牧師が、絶望を抱えた青年と出会う。
環境活動家の彼は、妻が妊娠したことに戸惑い、自分の子にこんな世界に生まれて欲しくないと訴える。
牧師は彼を説得しようとするのだが、内心は共感している。
自分の教会が環境破壊企業から多額の寄付を受けていることも、牧師の心を追い詰めてゆく。
牧師は内面の葛藤をノートに記録することで自分自身と向き合おうとし、矛盾を明確に突きつけられ、混沌に落ちてゆくのだ。
牧師として、人間として、いかに生きるべきなのか、信仰の意味とはなんなのか。
なぜ神は、残酷な仕打ちで自分を苦しめるのか。自分の果たすべき役割はなにか。
内容は全く違うが、一信徒として苦悩する牧師の姿には、「シークレット・サンシャイン」をちょっと連想した。
もちろん「タクシードライバー」も。
牧師は「人は選択する」と言う。
彼の前にもいくつもの選択肢があるのだが、果たして最後に選ぶの道とは。
さすがシュレイダー、ここは全く先を読ませないが、見事な幕切れに私は深く共感してしまった。
イーサン・ホークが素晴らしく、オスカーにノミネートされなかったのが不思議。
ブログ記事:
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