mさん

CURED キュアードのmさんのネタバレレビュー・内容・結末

CURED キュアード(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

設定が斬新だった。ゾンビから回復したが記憶は保持してる。そんな人達が主役でこの時点でもう面白いなと思った。他のゾンビ映画と違ってゾンビが恐れられる対象の様に描かれてなくて、水俣病や原爆による障害などのメタファーとして描かれていた。ゾンビという化け物を人間共有の忌み嫌う存在として置いて、全員で虐める。兵士の鬱憤の吐口に使ったりするのが凄く印象的だった。同じゾンビでもこんなに可哀想なゾンビは初めてだった。

アビーが自分の夫を殺したゾンビを許せるか?時いた時、病気だから許せると言ったが、実際に初めてセナンがそれを告白した時に激昂して出ていけと言っていたのがリアルだった。そもそも病気だから許せるとかはコナーに対してのよそいきの反応だからあまり深く考えてないし、実際にそれが現実になった時そうなるとは限らないのは明らかで、やっぱり激しく怒ってしまうのが凄くエモーショナルで辛かったけど引き込まれた。ここがこの映画の全てだと思う。

要は「cured」=「治療された」人達はどうなっていくのか?という映画だと思う。

治療されてもそれで全て無かったことになるわけではなく、変わってしまったし2度と元には戻らない。人間と元ゾンビは同じにはなれない。それで人間側も元ゾンビ側も悩む。自分と全く関係がない元ゾンビなら許せるが、自分の夫を殺した元ゾンビが目の前にいるのは許せない。当事者になってみないとわからないという部分もあったりして色んなことに当てはまるなと思いながら見てた。色んなことに普遍的に当てはまることを「ゾンビ状態から回復した人」っていうユニークなテーマで語ってるのがよかった。

この映画はゾンビになってしまった→おしまいの映画じゃなく、むしろゾンビになったその先を描いてる。こういう物語の先の部分を描く映画が好き。だけど元ゾンビを受け入れられるかどうか?という人間や元ゾンビの苦悩が結局苦悩のままで終わってて、この人間と元ゾンビの関係性がしっかりとした部分まで描けてないのかなとは思った。問題提議だけされて終わった感というか、こんな問題があるんだろうなっていう観客が考えた奴がそのまま描かれて発展せずに終わった感覚が少しだけした。
後最後コナーが出馬してるのはよくわからなかった。

結局考えの違いから争いが起きてしまうのも、猿の惑星聖戦記やシビルウォーのようで普遍的だった。

そして最後のゾンビが外に出る計画がしっかりと壮大で迫力があるのでクライマックスに相応しい展開だと思える。更にゾンビに見つかるというゾンビ映画の醍醐味がようやくラストで出て来るっていう構成も斬新で良かった。

色々考えさせられたし面白かった。
mさん

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