Inagaquilala

真実のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
3.9
もし、何の前知識もなく、監督が誰かさえ知らずに観たら、この作品はメイド・イン・フランスと思うに違いない。フランスを代表する女優、カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュの共演で描かれる或る家族の物語。監督は「万引き家族」で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督で、「ジョーカー」が最高賞に輝いた第76回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品された作品だ。トッド・フィリップス監督の「ジョーカー」に比べれば、明らかに小ぶりな作品だが、自分としては、是枝作品のなかでも好きな部類に入るものだ。

ドヌーブ扮する自分勝手な大女優が、自伝の「告白」を出版したことから巻き起こる、周囲の人々への波紋を描いていく。脚本家として活躍するビノシュ扮する娘が、アメリカから本の出版を祝うためにやってくるが、あまりにも真実と違う内容に意義を唱える。娘だけでなく、長年連れ添ったマネージャーも、自分のことがまったく書かれていないことに憤慨して、大女優の元を去る。何が真実なのか、そんな「謎」を提示しながらも、むしろそのことより、傲慢な大女優をめぐる人間模様が面白い。フランスを舞台にしていながら、是枝監督は、自分流の人間の描き方を貫いており、なかなか観応えはあった。こじんまりとした作品ながら、「ジョーカー」が出品されていなかったら、3大映画賞を連続受賞という快挙もあったかと思わせる作品。
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