回想シーンでご飯3杯いける

ビューティフル・ボーイの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
3.3
健康に育っていた少年ニックが薬物依存に陥っていく様子を描いた作品。ジョン・レノンの曲名をそのまま使用したタイトルがややロマンティック過ぎるように感じるのだが、ニックの父親でジャーナリストとしても有名なデヴィッドは射殺される直前にジョン・レノンのインタビューを担当した事もある人物なのだそうで、だからこのようなタイトルになっているのだろう。

本作では現在脚本家として活動するニックの自伝と、デヴィッドの著書の双方を組み合わせる形で脚本が作られている。両者の目線を俯瞰する事で、薬物依存から抜け出そうとする立場と、それを支える立場のすれ違いや迷いを浮き彫りにする試みだと思われるが、結果的に時系列が前後する展開になっていて、正直話が分かり辛く、正直成功しているようには思えない。

それでも親子を演じるスティーヴ・カレルとティモシー・シャラメの熱演により、何とも心に迫るドラマに仕上がっていると思う。特に親目線で観た時の、焦りと諦めの心境が繰り返される様子に胸が締め付けられる。

日本ではアメリカほど薬物汚染が広まっていないように思えるが、本作のレビューでさえ「本人が甘い」という自己責任論が散見され、薬物依存=犯罪と言う認識が非常に強い。救済や更正の観点で見ると、アメリカ以上に危険な状態であるとも言えるのではないだろうか。