みやっち

ベイルートのみやっちのレビュー・感想・評価

ベイルート(2018年製作の映画)
3.8
私好みの骨太でグイグイ来る作品だった。
イスラエルとパレスチナの戦いはもう
シオニズム運動から何十年も経っても
変わらない血で血を洗う戦いだ。
それぞれが歴史的な怨念で土地を争う
永遠の修羅場なのだ。
単純にどっちが悪いなどと言えるような
代物ではない。

ただ各々が各々の立場で正義と利権を
貪りあう「聖地」であること。
民族と宗教がいかに人類にとって「呪い」
であるか思い知らされる場所なのである。

主人公スカイルズの活躍で人質奪還に成功
するのだが、ラストの報道シーンでニュースが
アメリカ大使館の爆破事件を報じており
暗にスタイルズが昼食会に参加したことで
爆破テロに巻き込まれたことを示唆する
エンドが何とも言えないこの呪いの深さを
示している。

もうこの地は永遠に平和とは無縁な地に
なってしまった。
現在もイスラエルによるパレスチナ攻撃が
世界中の若者から非難を浴びているが
彼等は目の前の犠牲者をただ可哀想と思って
いるだけで歴史的な観点から見ている訳では
ない。ナチスのホロコーストを悲劇だと感じる
若者たちが、ユダヤ人が再建した国家が
イスラム勢力から国を守る闘いを批判する。

戦争とはシンプルに言えばお互いの正義の
押し付け合いなのだ。勝った方の言い分が
正義とされるのは過去から学べる。

人類が戦争という愚かしい行為を克服するには
このイスラエルとパレスチナの諍いを乗り越える
のと同義なのである。
みやっち

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