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ランボー ラスト・ブラッドのLaSalsaのレビュー・感想・評価

3.6
ベトナム戦争が終わってもう少しで半世紀。それでもランボーの戦争体験は残っている。と、、いうことなんでしょうか。

ひとたび戦争が始まれば、この映画のトンネルで起こったような残虐な殺し合いになる…と。戦争は残虐かどうかじゃなくて確実に殺せるかどうか、となるわけで…頭を吹っ飛ばす、足を吹っ飛ばして動けなくしてから命を奪う。戦場で音を立てたくなければ銃でなくナイフになるだろうし、無意味に人の血が流れ死んでいく。これが戦争だと。

つまり、私を含め戦争を知らない人間達は、殺し合いも戦争も、ただのエンタメでしかない。戦争の記憶やいたましさを残虐成分なくして伝えるのは限界があるということでしょうか。戦争反対の動機は圧倒的な残虐性と目前に訪れる死、に晒されることでこんなことやりたくない、見たくない、経験したくない、と強烈に感じることだと。

製作者はひと昔前より、戦争に対する自制心が、緩みつつあると感じているのでしょうか。もちろん自分が望まなくても相手が仕掛けて来れば、どんなに戦争反対と叫んだところで巻き込まれてしまうもので…アメリカ最強だった時代からの世界の構図に変化が起きていることもその一つかもしれない。

残虐なシーンから目を背けるな、これが戦争なんだ。こういうことを平気でやれるのがランボーで、戦争はランボーを作り、ランボーは半世紀経つのにまだ戦争の記憶に悩まされている。こんな経験をしたいか?こんな人生になりたいか?全てを奪われても結局誰も助けてはくれないし、救いもない。

反戦とは難しい。本人だけ叫んでも平和は訪れない。それであっても、戦争を回避するためにやれることは皆が等しく死と痛みの苦痛を分かち合い、経験することでそれを動機に戦争回避の努力をすることなんだろう。

ランボーはGPSや高度なセンサーを使わず、超アナログのまま。監視カメラすらなしでゲリラ戦を展開する昔のランボーのまま。しかし、なにも考えなしにメキシコに乗り込んでいってリンチにあったのは…戦闘のスペシャリストとして老いたのかな…と感じさせた展開でした。
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