dm10forever

ハロウィンのdm10foreverのレビュー・感想・評価

ハロウィン(2018年製作の映画)
4.0
【安定感】

「安定感」ってホラー映画に使う言葉ではないですね(笑)。
でもいい意味で「古き良きホラー映画」のテイストを踏襲しつつ現代風なアレンジも加えて「今見ても古さを感じない古典の面白さ」が遺憾なく発揮されていたと思います。

と言いつつ当時のオリジナルは未見ですので、ストーリー上の繋がりや登場人物の設定などディティールに関する部分ではわからない点もありましたが、それでも今作を見ながらそれとなく追っていける作りになっているのは親切な構成だなと感じました。

今作はリメイクやリブートではなく、正統な続編という位置づけでいいのかな?
登場人物云々の繋がりがわからないから、誰がお初キャラで誰が継続キャラなのかを実際に鑑賞しながら理解しなければならず、最初は若干戸惑いますが、割と早い段階でその辺はクリアできると思います。
というかそれ程混み合った人間関係みたいなものもないしね。

時折流れる有名なテーマはそれだけでも恐怖を煽るし、それ以外の細かいSEなんかも、あえて80年代ホラーで多用されていたようなシンセっぽい感じの音を当てていたり、変にゴテゴテと余計なものを付けずに「はい、これが死亡フラグです」とわかりやすい旗を頭に立てて、見事に回収する一連の流れにはブラボーと言いたくなるくらいの潔さ。
これぞポップコーン片手に映画館で「2本立て」を普通に見ていたあの頃の映画なんですね。

なので、ホラー映画を見ながらもどこかで安心感にも似た不思議な感覚があって・・・なんなんですかね。

凶悪殺人鬼ブギーマンについても、最初からマイケル・マイヤーズという男と正体が分かっているのにも係らず、本作では最後まで彼の顔を映さない。あくまでも映るのはあのマスクを被った「ブギーマン」としてなのだ。
だからどんな状況にあっても本人の表情を窺い知ることは出来ない。
全く無表情のまま殺戮を繰り返していくのだ。
そして無表情な分だけ見ている側は理解できなくて怖くなる。

現在の撮影技術や映像技術の進歩は、生身の俳優が演じる必要がないくらいに「限りなく本物」のような映像を作り出すことが出来る。
それは人間が出来る限界を超えた行動を人間にさせることも出来るようになった。
しかし、同時に恐怖のバロメーターがおかしなことになっていき、人々は「もっと怖いものを、もっと怖いものを」と、よりハードな刺激を求める結果になってしまった。

そんな時に舞い戻ってきたのが「たった1枚の無表情なマスクを被った男が黙々と人を殺し続ける」という超絶シンプルな今作だった。
本当に展開も行動も全てにおいて「期待を裏切らない」という点では良作と言える。
ただ、点数がそれ程伸びていないのは、自分が勝手に期待値を上げすぎたからかもしれないけど、もっともっと「スプラッタ系」だと思ってたから。
いや、誤解がないように言えば結構血は出てたんですよ。
それこそ時代の変化に流された自分が、それに釣られて勝手にハードルを上げてしまっただけの話なんです。
テキサスチェーンソーとかハンニバル・レクター博士の「頭蓋骨パカ~」なんて伝説級のトラウマ映像でしたよ(汗)。

確かにあんなのに慣れてしまっているので、正直殺戮シーンでショックを受けるような描写はそれ程ありませんでした・・よ。
あれ、俺がおかしいのかな?

あと、面白いのがブギーマンの現れ方ですよね。
変に「ゴースト」や「超人」に寄せずに、あくまでもマイケルは「生身の人間(サイコだけど)」なので、100mを瞬間移動したり、銃で撃たれてるのにノーカンになったりとかってことはありません。
移動は普通の人と同じ速度ですし、銃で撃たれればダメージも受けます。
でも、やっぱり「あのマスク」を被っている時点で普通ではないですけどね。
でも、実際に被害者の近くに忍び寄るブギーマンは、観ている私たちから十分見切れる位置をゆっくりと歩いていきます。

(あ~あ~後だよ、後ろ~!)

ご存知「8時だよ!全員集合!」を観ていた全国の少年少女が取り憑かれたかのように志村けん向かってに叫んでいたあの懐かしのフレーズが蘇る。

とにかく「ちゃんと期待を裏切らないブギーマン」。
そして40年間ブギーマンを自分の手で殺すことだけを考え続けていたローリーとの再接近は、設定的にはやや強引な展開も「ここで決着をつける運命にあったんだ」と考えればそれすらも受け入れる。
そしてブギーマンと対峙するローリー親子+孫。

とにかく女性陣が強い。肉体的にも精神的にもタフ。
ローリーはターミネーターの「サラ・コナー」よろしく40年もの間、来る日に向けてひたすら備えを怠らなかった。
娘のカレンはそんな母の異常さに嫌気がさして・・・っていう前フリが凄い効いていて、最後のカレンの一言に「ゾクゾク!」と来ました。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、超クールです。

結構面白かったな。こうやって期待に応えてくれる映画ってわけもなく何度も観たくなることがあるんだけど、これももしかしたらそうなるかもしれない。
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