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将軍家光の乱心 激突の教授のレビュー・感想・評価

将軍家光の乱心 激突(1989年製作の映画)
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東映の「集団抗争時代劇」の流れを組むアクション大活劇。
やはり、時代劇は落ち着く。
冒頭から狂乱じみた矢の応酬。女性の首は射抜かれ、侍たちの目玉も射抜かれ、爆破に斬り合いと、いきなり景気が良い。

そこから約2時間の間、基本的には「見せ場」だらけで心地よい。
浪人に身をやつした石河刑部(緒形拳)たち面々はは後の徳川慶喜、幼名の竹千代(茂山逸平)の警護に雇われる。
その竹千代を保養先から江戸城まで向かう道中の刺客と死闘を繰り広げるだけの物語。

ただ、千葉真一が主導で作り上げたアクションシーンの迫力、バリエーションの豊富さが圧倒的。
広い空間と狭い空間それぞれを活かした画面設計や、俳優たちの身体性の高さを的確に活かしたアクション演出は現代でも見劣りしない。

本作はとにかく「見せ場」だけでシーンを繋ぎ、非常にシネフィル的なノウハウを使い倒していて映画的な快楽、活劇的な快楽に満ちている。
もはや日本の映画界、あるいは文化的に日本人自体が「捨ててしまった」時代劇としての快楽が溢れていて、現代では再現することができない技術の宝庫として、本当に面白かった。

その分、人間ドラマは後退していて、登場人物たちの掘り下げ不足や、終盤の展開の冗長さ、蛇足感も感じるが、充分楽しんだ。
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