チェリビダッケ

海獣の子供のチェリビダッケのレビュー・感想・評価

海獣の子供(2018年製作の映画)
2.7
この作品を観た後に思い出したのは、マモーの脳味噌やハレー彗星と共に地球にやってきた女神様のことだった。

とにかく画面の作り込みは圧巻。職員室の首振り扇風機とその風になびく琉花や顧問教師の髪の毛の演出など、そんなところまで動かすのかと思ったし、琉花と海がヒッチハイクしたタンクローリーの金属の質感も然り。ただ、画面から伝わってくる情報量に比して世界観の構築が甘いようにも感じた。国際的監視下に置かれているという割には差し迫った危機のようなものも感じなかったし、没入感に欠けた。

芦田愛菜さんの声には驚かされた。冒頭の独白の部分でこの役はプロの声優が演じているのだと思い込み、エンドロールを見るまで己の間違いに気付かず。才能なのか努力の賜物なのかは知らないが素晴らしいとしか言いようがない。

父母は別居状態で、琉花は酒浸りの母と同居中。母には生活能力がほとんど無いが、一方の琉花にも自立心は芽生えていない。琉花にはまず缶ゴミを捨ててきてもらいたいと思う。(母がビールを飲んで貯めたものだとしても)

ハンドボール部の内情は割と深刻だと思う。琉花が幾度となく未成熟なプレーを犯してきたのは家庭内の生育環境のせいだとしても、部内の実戦形式の練習で小柄な同僚に翻弄された程度のことで足を引っ掛ける長身選手がいるという事実。みっともないにも程がある。そしてこの部活の一番のガンは顧問の教師。トラブルの原因となったプレーを見逃したあげく、適正な指導を行おうとしない。というか出来ないのか。今や闇に葬り去られた日大アメフト問題等、日本のスポーツ界に蔓延る負の空気感を画面から感じ取り気分が悪くなった。夏休みが終わり、長身選手と再会した琉花。キミはこの部をどう変えていくのか。

久石譲さんの曲が全く耳に残らなかった。少なくともジブリの名作には皆耳に残る劇伴があったように思う。