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海獣の子供のwwsのレビュー・感想・評価

海獣の子供(2018年製作の映画)
3.5
物語の壮大さ、緻密かつ大胆な絵と構成をアニメーションでどうやって表現するのか、原作読者の関心の多くはそこに尽きていたと思う。 誰もが気になるであろうその点については、どうしたって言葉では伝えきれないので書きません。


さて、尺の問題なのか原作に比べてエピソードがかなり削ぎ落とされていたものの、この物語をどう解釈するかは見た人によってかなり幅が大きい作品だと思います。
そんな中、私にはキャッチコピーに象徴されるような「コミュニケーション」についての作品だったと感じられました。

冒頭、部活動で先生に咎められるシーン。悔しさと自責の矛盾に押しつぶされて口ごもってしまうあのシーンは、「思っていることなんて大抵の場合、人に伝えられないし伝わらない」という、誰もが思い当たることがあるワンシーンでした。

そうして自分の気持ちなんて誰にも理解されず、自分はこの世でひとりぼっちのような気持ちになる。せっかくの夏休みなのに滅入るような日々を過ごす中で、海と空に出会う。 海と空は人間よりも魚(自然)に近い存在。彼らを媒介に大自然と接する中で、人として生物として成長する……つまり、この映画は「非言語コミュニケーション」を描いていたのだと思うのです。だから物語が進むにつれて言葉が少なくなっていく。

「言葉を交わさなくても、伝わることがある、伝えられることがある」これこそ、作者の伝えたかったことだと感じたのです。 それ故、物語の最後の二人に言葉は必要なかったのでしょう。


言葉でかわさないコミュニケーションは、どんなにうまくやっても空想や妄想を含まざるを得ず、そこには余白が生まれる。 でも、そもそも誰かのことを100%理解することなんてできない。それをわかった上で、だからこそ他者のことを知りたいと思ってしまうし、それが愛するということなのかもしれない。人には想像する力があるのだから。

そうか、だからこの映画は愛についての映画でもあったんですね。
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