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マチネの終わりにのkanegon69のレビュー・感想・評価

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
4.5
平野敬一郎氏の原作「マチネの終わりに」を読み込み、いたく感動したため、映像化されるにあたり、映像のイメージがどのようになるのか気になっていました。

結果、その心配は杞憂に終わりました。原作のもつ、人と人が愛するということ、どうしようもない事実を受け止めていくこと、その過程での苦しみ、切なさ、時に傲慢になる愛情、非常にうまく表現されていたと思います。俳優陣が素晴らしかった。

洋子役の石田ゆり子さん、彼女が泣くシーンがたまらなく胸を切なくさせ、頬に涙が伝いました。薪野役の福山雅治さん、40代で不惑の年代になり、アーティストとして自分の進む道に悩む姿を非常にうまく演じていました。「幸福の金貨」の演奏、さすがプロです。ラストの演奏シーンなどは、もはやいつものアーティスト福山雅治の顔と交錯するようなパフォーマンスを演じていました。そして、原作で散々叩かれた早苗役の桜井ユキさん、映画の最初と最後で全然違う印象になる名演技で危うくバイプレイヤーが主役を食いそうになるぐらいの演技力でした。

西谷弘監督もさすがだなと思いましたね。冒頭から洋子が必死で走るシーン、、薪野の演奏中の深い闇を表現するシーン、そしてやっぱり、クライマックスのシーンの映像の作り方が秀逸でした。

溜息がでるような切ない大人のラブストーリーでした。

原作の平野一郎氏も、映画を観て原作を損なわないエンディングに感動していたようです。

個人的には、原作で平野氏が繰り出していた様々な社会問題はやや抑えめになっており、(例えばイラクのシーンなどはカット)、純粋にラブストーリーにのめり込める濃厚な2時間でした。
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