てつこてつ

泣くな赤鬼のてつこてつのレビュー・感想・評価

泣くな赤鬼(2019年製作の映画)
3.2
スポーツにおける精神論を重視する堤真一演じる熱血監督を見て、中学時代の部活の担当コーチを思い出した。

野球部ではなかったが、自分が所属していたのは地区大会では毎年優勝の強豪校で、その分、校内の全運動部の中でも特に練習が厳しく、早朝練習、放課後練習はもちろん、土日も必ずどちらかは練習が入っていた。担当の先生は本当に怖くて、今のご時世だと絶対PTAからクレーム入るであろう炎天下での無茶苦茶なハードトレーニングとかも課されていたが、とにかく皆、コーチである先生に認められようと必死だった。ある日、そんな先生の幼い娘さんが病死された。だけど、全く落ち込んだ様子を選手たちに見せることなく、厳しく、それでいて献身的に指導し続けてくれた、その姿は未だに忘れられない・・。

このような己の経験もあって、この作品で描かれる厳しい監督と、才能溢れる生徒の間で起こる根性論の葛藤ってのは凄く理解できるし、全体としては、良い設定、ストーリーだとは思った。

但し、肝心な高校時代の二人の関係性の描写が、エッセンスの上澄みをすくっただけのような形となってしまっており、厳しく素っ気ない態度を取りながらも、実はその生徒に一目置いていた・・という非常に重要な部分が分かりやすく伝わってこなかったので、13年ぶりに再会した余命あと僅かな元生徒に対して、何故に、あそこまで献身的に接するのか?・・って部分で説得力に欠け、あまり響いてこなかった。故に、終盤の下りでも、泣けることもなく、泣かないキャラである赤鬼の激変ぶりに若干の違和感も覚えた。

コーチと自身の娘や家族とのすれ違い描写も何だか中途半端。

個人的にもう一つ凄く引っかかったのが、13年後の教え子を演じた柳楽優弥と、彼の生徒時代を演じた堀家一希があまりにも似ていないこと。16歳設定と29歳設定のキャスティングは、普通、運動を止めて体型は変われど顔立ちが極端に変わることはないので難しいところ。ハリウッド映画なら、恐ろしくメインの俳優に似た若い役者をキャスティングするだろうし、韓国映画なんかでは、30歳を超えた役者に学生服着せて高校生役を演じさせるなんて当たり前の事。

柳楽優弥は、やはり何と言っても、その目ヂカラに特徴と魅力があり、印象に残りやすい顔立ちなんで、堀家とは顎の形や顔の骨格からして似ていないのが最後まで引っかかってしまった。彼のライバル的な役柄を演じたチームメイトも高校時代と社会人になってからは別の俳優が演じているが、違いがそこまで気にならなかった分、なおさら主役級のキャラクターの顔の違いは気になった。柳楽優弥が金髪となっているので、より一層の別人感。製作者サイドも、この部分を悩んだ挙げ句、顔立ちよりヘアスタイルの違いに視聴者の注目が行くように配慮したのかもしれないが、個人的には逆効果であったと思う。

撮影時間に余裕があれば、柳楽優弥に筋トレさせて野球部員らしい体型変化、スポーツ刈りで高校時代を演じさせ、その後、減量して13年後のガンに冒された姿を演じさせる・・ってのが、本来ならベストだったのかもしれない。

堀家一希という若い役者さんは、この作品で初めて見たが、リアルに甲子園球児のような体格で、好演。7月公開の「東京リベンジャーズ」実写版にも出演しているようなので、将来が楽しみ。

そして、柳楽優弥の母親役のキムラ緑子は、やはり、存在感抜群でいい感じ。
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