てつこてつ

犬神家の一族のてつこてつのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(2006年製作の映画)
3.5
NHKBS。劇場公開時以来の再鑑賞。

劇場公開時には、ほぼほぼオリジナルと同じ台詞と撮影手法でダレ得のリメイク??と思ったものだけど、こうやって再鑑賞してみると、多少はストーリーに肉付けされて分かりやすくなっており、2000年代なりの出演者陣がやっぱり豪華だなあと。

犬神家の三姉妹に富司純子・松坂慶子・萬田久子と大女優がそろい踏みだし、オリジナル版では誰が演じていたのか殆ど記憶にない彼女たちの婿・息子にも岸辺一徳・葛山信吾・池内万作といい役者を揃えてる。個人的に一番いい味出してるなと思ったのは弁護士役の中村敦夫。

逆に個人的にイマイチだなあと思ったのは、市川崑監督自身もキャスティングに反対しながらもプロデューサーの一瀬隆重に観客動員の為に必要と説得されたという珠世役の松嶋菜々子。オリジナル版の島田陽子の清楚さが出し切れていないし、市川崑の嫌がらせかと思うほど着物姿がとにかく野暮ったく見えて彼女の美しさを生かし切れていない感。深田恭子演じる旅館の女中が「それはたいそうお綺麗な方でして・・」に当てはまる本作の製作当時の売れっ子女優で珠子の年齢に合うとなると確かに松嶋菜々子が最初に浮かぶのも興業的には分からないでもないが、もっと考えてほしかった。少なくとも石坂浩二に次いで二番手で名前が表示されるのはもの凄く違和感を覚えた。

佐清と静馬の一人二役を演じる尾上菊之助も、富司純子との実の母子共演というのは、特にクライマックスの下りなどは実に真に迫った演技でいいんだけど、いかんせん、歌舞伎役者特有の、特に女形もやる甘過ぎる顔立ちをしているので、個人的にはオリジナル版のあおい輝彦であったり、何度もテレビで制作されている中では椎名桔平、西島秀俊、賀来賢人あたりのほうが役のイメージとしては好みかな。

映画ならではの犬神家の日本風の大邸宅のセットや戦後間もない信州の街並み、美しい湖のロケーションなどは素晴らしい。

実は、映画版やドラマ版は何度も見てる本作、原作だけは未読なのだが、いつも猿造と珠世のプラトニックな関係性(特に猿造側の)がどうもしっくりこないのは自分だけかな?
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