eye

岬の兄妹のeyeのネタバレレビュー・内容・結末

岬の兄妹(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

"岬の兄妹" (2018)

「また真理子が居なくなった」

冒頭足に障害を持った兄 良夫
の言葉からストーリーは始まる

"累犯障害者"(著 山本譲司)
売春する知的障害女性たち 

そして

監督自身の身近な体験から
インスパイアされ
製作されたこの映画

『冒険…冒険する!』
といい知的障害の妹が
海鮮丼(※アダ名)に
カラダを売った

もしくは

レイプされたことから
生活の破綻が始まっていく

兄自身は脚の障害を
理由に仕事を首

内職は一個一円の
ポケットティッシュ

貯金は皆無

妹はポケットティッシュを
「甘い」と言って食べる

家賃未払いからの電気ストップ

あらゆることから限界に達し
もう戻れなくなり

妹を売ることを決意する

売春を繰り返しカネを稼ぎ
電気が煌々とつく中で

マクドナルドのハンバーガーと
ポテトをたらふく食べる

そして兄 良夫は

部屋の中の壁中に貼ってある
ダンボールを全て剥がす

部屋はもっと明るくなる

ここはひとつの
ターニングポイントで

"生きるためなら
もう手段を問わない"

というメッセージを送ってくる

売春を繰り返していくうちに
2人に心の変化が生まれる

妹 真理子は
相手に恋をしてるような
気持ちが生まれてくる

兄 良夫はブレーキをかけるも
駄々をこねるその姿を
どう受け止めていいか

分からなくなる

もう一つのターニングポイントは
学生相手に売春させる場面

カネを奪われそうになり
なかなか出なかった便が出て
人糞で反撃する

これを喰らったら戦意喪失

輩に"覚悟の違い"を見せつける

※ちなみにこの強烈なシーンで
劇場は混乱と喝采
そして笑いが入り混じってた

絶望感の中に笑いを含ませ
テンポよく駆け抜けて
躍動感を見せてくれる

目を背けたくなるタブーを描き
それが社会的問題への提議よりも

"兄妹の生臭さ"
"必死に生きる姿"

を見せつけてくる

観てる最中にやっぱり倫理観から
「これをやったら終わりだろ」
って警察官 肇の言葉が効いた

ただ一方で
「生活していくのに
しょうがねぇだろ」
って想いも
ハッキリ伝える良夫の苦しみが
響いてくる

ストーリーは
妹 真理子が妊娠して
更に変動する

兄 良夫は
これからのことを考え
自分の意思で
想いを売春先の客に
伝えるも一蹴される

気持ちが先にあるから

相手からしたら
兄 良夫が何言ってるのか
わかってないけど

兄の本心は偽りなく
真実として語られる

ラスト

もう一度
"電話が鳴る"

その真理子と良夫の表情に
圧倒される

そして心を揺さぶられ胸に響く

どこか遠いところに一人
置き去りにされてしまったような
心細い気持ちになってしまう

そしてまるで
"噛みつかれた"
あとにやってくる
虚無感も襲ってくる

繊細且つリアリズムの果てから
この先に見える景色は

生き続ける2人が
救われることを
祈ってやまない
情景となりますように
eye

eye