rosechocolat

岬の兄妹のrosechocolatのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
4.0
あらすじ読んで、あまりにも悲惨なので暗いのは確定だし、観ようかどうしようか迷ってるうちに公開終わりそうなので思い切って行ってみた。そして行って大正解。釘付けになってしまう。

思いっきり現実的でシュールで、フォローの仕様がないストーリーで、
恐らくですがこれに似た話は表に出てこないだけで、実在しているような。あるいは今後より一層国民の貧困が進むにつれ、出現してくるであろう将来か。

「衣食足りて礼節を知る」という諺を思い出させる兄妹の暮らしは、正視できないほどの荒れよう。そこから這い上がりたくても難しいのはわかる。がしかし、何か救いの手はなかったのかとも思う。救いの手はあるけど敢えてそれに縋らないのが良夫のプライドなのだろうが、プライドばかり高くても解決にはならない。わかっているのに卑屈になり、「普通の人」に弱味を見せたり頼ることをよしとせず繰り返すのも、この手の問題が解決困難なことの理由かもしれない。

通常なら理不尽しかない真理子への仕打ちも本人にはそれと分かるはずもなく、そこから芽生えた恋愛感情が痛々しい。思いつくまま自由に動き発言する真理子のケアをする側の良夫の苛立ちも、誤魔化さないリアルな描き方。

ラストもあの展開で切ったのが正解で、あれ以上ダラダラと続けて尺を引っ張らないことが良かった。振り向いた真理子からはエロスすら感じられる気がした。そして妹に対しての贖罪と、押し寄せる現実との間で戸惑う良夫の表情は、今後も続く修羅を何も変えられないことを物語っている。全てのシーンが目を背けたくなるが、「現実をどこまで映画的にできるか」という命題にギリギリまで挑戦していた。
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