MasaichiYaguchi

おかえり、ブルゴーニュへのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

おかえり、ブルゴーニュへ(2017年製作の映画)
3.6
フランス・ブルゴーニュ地方のワインというと、先日解禁されたボジョレーヌーヴォーが話題だが、この地にはピノ・ノワール、シャルドネという赤ワイン、白ワイン共に傑出したレベルのものがあって「ワインの王」と呼ばれる。
本作はこの地方のワイナリーを舞台に、或るドメーヌ(ワイン生産者)に訪れた危機を通して、ワインのように家族の絆が美しい四季を背景に〝熟成〟されていくのを綴っていく。
主人公のジャンはドメーヌ一家の長男として生まれ育ったが、〝ルール〟が引かれたような人生に嫌気が差し、他の世界を知りたくて故郷を飛び出してしまう。
その彼が父親が末期状態であることを知って10年振りに帰郷する。
故郷には父親に代わってワイナリーを切り盛りする妹のジュリエット、そして別のドメーヌの婿養子になった弟のジェレミーがいる。
3人の久々の再会もつかの間、父親が亡くなったことにより様々な課題が彼らの前に出てくるが、その課題以外にも夫々が問題を抱えて悩んでいる。
映画はワイン用ブドウ栽培をブルゴーニュ地方の美しい四季を背景に繊細に映し出し、そのワイン作りと並行して3人が共通して直面する課題、個々が抱える問題に対しての試行錯誤を浮き彫りにする。
劇中での印象的な言葉として「時が培う」というのがあるが、若い頃は分からない、汲み取れないことが年を経ることで出来るようになったり、近過ぎて気付けなかったことが、時間や距離を置くことで見えてくることがある。
この作品は、登場人物たちが時に衝突することもあるけれど、自分や家族、今まで歩んで来た道のりとこれから、そして血や心につながる故郷と向き合う中で見出したもの、それらを含めた家族の姿が熟成されたワインの味わいのように心に染みます。