フランスとドイツの国境にまたがって広がる炭坑において、フランス側でガス漏れによる爆発事故が起こる。戦争から間もない両国間は緊張状態にあったが、ドイツの炭坑夫たちは生き埋め状態にあるフランスの炭坑夫たちを助けに国境を越える……というお話。
1906年に実際に起きた炭坑での事故を基にした作品で、時代設定は第一次大戦後に変更されているが、フランス人とドイツ人はちゃんとお互いの言語を話し、言葉が通じない場面もあったりとご都合主義では描かれていないあたりが好印象。
事故のシーンは昔ながらに結構怖くて、静かに迫り来る炎が画面を一気に埋め尽くしたり、不意に周囲が崩落してあっという間に生き埋めになってしまったりと、変にBGMやSEを使って派手に演出せずに、突然起こる災害の無慈悲さをとことん見せつけてくる。群像劇的にさまざまな視点で事故の様子を描くことで、一人のヒーローではなく市井の人々による物語であるところが強調されているのも良い。
印象深いのがドイツの炭坑夫が入っている集団浴場?のような施設で、だだっ広い空間にシャワーがいくつもあり、天井面には着替え用の作業着のようなものが大量に吊るされているんだけど、効率化を極めたが故の無骨すぎる設計に逆に未来を感じた。後、印象に残ったのは単純にこの時代の映画で普通におじさんたちの裸が大量に出てくる光景を見慣れてなかったというのもあるが。
わざわざ時代を第一次大戦のすぐ後にしたのは、単に近い時代で馴染みやすくしたわけでは無く、隣り合う国同士いがみ合っていたが命の危機にはお互い助け合うことが出来るじゃないか…という明確な反戦メッセージがを込めるためでもあり、最後には『ロッキー4』ばりの演説シーンもあったりと意外とアツイ映画だったりもする。ただ、単純に良いことばかりではないという含みもラストカットで見せてくるあたり冷静さも持ち合わせているバランス感覚が良い。結局、現実ではこの後フランスとドイツはまた戦争で敵対することになってしまったあたり皮肉なもんだが……。
(2022.74)