ミュージカル・コメディーって、邦画では難しいジャンルだと思うんです。そこに敢えて挑戦した矢口監督、敢えて挑戦しただけのことはある作品です。
主演の三吉彩花さん、初めて知りましたがなかなかの逸材。
登場人物が「いきなり歌いだして」「歌い終わったら何事もなかったように場面が進む」のは変だ！というアンチミュージカル派の言い分を逆手にとった構図はお見事。これならアンチミュージカル派も呼び込めるはず。
ただ、そのための苦労と苦心が、ところどころで無理やりな設定となる。勝手に歌って踊り出すという設定の主人公に、歌っても破綻しない場面を用意するための、ロードムービースタイル。ロードムービーにする理由がそんなだから、どうしても不自然な旅になってしまうし、旅を共にする相棒の存在も同じ理由だから、いろいろ無理めな設定があって、旅をするうちに芽生える「自然なバディ感」が感じられない。無理めの旅なんで、「旅を経て主人公が掴んだもの」もイマイチ感動を収縮させてしまう。しかしそれもこれも、元はと言えば主人公が突然歌って踊っても「不自然にならない」ための工夫。こうした工夫でミュージカルの間口を広げ、楽しめる作品になっているのだから、なんともじれったい(笑)。
とはいえ、冒頭に述べたように、この難しいジャンルを、ここまで楽しめる作品に仕上げたのは矢口監督ならでは。単純に映画館でお金を払って観て、後悔はしない満足度です。
