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ダンスウィズミーのBGのレビュー・感想・評価

ダンスウィズミー(2019年製作の映画)
3.7
人はこの映画を観て、気軽に楽しめるコメディだと言う。でも、俺は本当はそうは思わない。

「サバイバルファミリー」 の矢口監督によるミュージカルコメディ。催眠術によって音楽が聴こえると歌って踊り出してしまう主人公が、ロードムービーさながら旅を続けて催眠を解くというお話ですよと。

ミュージカルシーンにおいて歌って踊り出す訳だけど、ポイントは、実際には主人公だけがそのミュージカル世界を体感しているってところ。つまり言葉は悪いが、周囲から見ればイカれた女な訳です。
そして、この事象は催眠術によるものであり、「思い込み」によってもたらされている"主人公の主観的な脳内世界を映像化した物語"だということなんです。

終盤になると割と支離滅裂と言うか、現実と思い込み世界が混沌とすると言いますか。狙ってこうなってるのかは不明ですけど、でも意図的と思わざるを得ないレベルでボーダーレスとなったその中で、主人公は本来の自分らしさを取り戻してしまう。

つまりですよ?
思い込んだ狂った世界で自分らしさを取り戻してしまうのならば、それはもう、本当の自分で居られない現実世界の方が狂ってるとも言えるんじゃないか。
思えば、僕らは「思い込み」によって生きている。幸せだと思えることは、もしかしたら誰かに植え付けられた価値観によるものかも知れない。

果たして、彼女がかかっていた催眠とは、ミュージカルスターになってしまうという催眠だけだったのだろうか。

でもさ。本当の自分で生きられない狂った世界なら、世界の方を捨てちゃえばいいじゃん。そしたら、本当の自分として生きられるんだよ?ね?

こうなると、もうラストシークエンスのおぞましさたるや。狂った現実を捨てて、自分本来の姿で幻想を生きる道を選んだとも取れないだろうか。
そしてそれは同時に、この現実は誰かに思い込まされたイカれた世界だと言っているのと同義なのである。

そんな薄ら寒い感想を抱きながら、一緒に観に行ったツレと「面白かったね!」と屈託なく笑い合う俺もまたイカれているに違いない。
俺はこの幸せを感じられる現実を捨てることなんて出来ないし、捨てたくもない。だから、思い込むしかない。
彼女と観た映画は楽しくてハッピーでなければいけないし、共通の思い出として楽しんだものでなければならない。そうでなければ、この狂った世界では正気を保てないのだ。
そうなのだ。だから、この映画は「気軽に楽しめるコメディ」でなければならないのだ。もちろん、ツレは俺のこんな感想を面白がってくれるとは思うが。

ということで、本作は紛れもなく「気軽に楽しめるコメディ」なんです。そうでなければ、ならない。
なんか評価しているように読めないレビューですが、俺は本当に楽しかったんですよ!これでも!
あまりオススメはしませんが、俺はやっぱり矢口監督が大好きなのでした‼︎
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