まる

mid90s ミッドナインティーズのまるのネタバレレビュー・内容・結末

2.6

このレビューはネタバレを含みます

自分が憧れている世界の人たちに認められて受け入れられていく喜び。兄に一方的に殴られて叫ぶのは自分だったはずが、いつのまにか殴り返し、反抗できるようになっていて、兄がTシャツをかぶって吠える。あの場面でスティーヴンがオレンジジュースを冷蔵庫から取り出して、それをどっかにやってしまう場面、最後に兄が2人分のオレンジジュースを買ってきてスティーヴンに渡すところ、オレンジジュースが2人の間の関係の象徴としてうまく機能している。
スティーヴンの止まらない自傷行為。痛みで生きていることを実感したいのか、死んでしまいたいと思いながら、高所から落ちても、車で横転事故にあっても死なないところに、本当は生きていたいスティーヴンの気持ち、もしくはあんな目にあっても死ねない、思い通りにならないままならなさ、救いのなさが描かれているのかもしれない。
スティーヴンが自傷行為するのは家にいる時だけで、レイたちといる時は自らを傷つけなくても生きていると感じられたのかもしれない。
ルーベンのアドバイスが実はすごく効いていて、無言でいることで何者かと思わせることにある程度スティーヴンは成功していて、だからこそレイも弟の話をしたんだろうと思う。
レイの最後の方はセリフ、レイからしたら息子を想って怒りにくる母の存在が、スティーヴンにはまだ帰ることのできる暖かい世界があるように感じたのかもしれないけど、スティーヴン本人からしたら、遊びまくっていたくせに真面目になれと怒ってくる母親や暴力的な兄、父の不在という現実はけして帰るべき世界じゃない。でも、スラム出身とかいうわかりやすい「不幸な家庭」がないから周りからは苦しみが理解されにくい、そういう苦しみが描かれていたように思う。
ハニーボーイに続いて、年齢差のある女の子が小さい男の子と性行為する場面があって、ああいうときの女性は女性的っていうより母親的な印象がある。
誰といるときもスティーヴンの体の小ささが印象に残った。
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