しの

太陽は動かないのしののレビュー・感想・評価

太陽は動かない(2020年製作の映画)
2.1
冒頭から海外ロケーション&アクションで頑張っていて、その後も往年のスパイ映画並みに世界を股にかける展開で「大作でござい」という顔をしているが、話に全く興味を持てない上に編集も変だし揃いも揃ってカッコつけシリアス風の台詞回しが鼻につくしで、むしろどんどんダサいパロディにしか見えなくなってくる。

そもそも本作唯一のオリジナリティであるはずの爆弾設定が全く活かされていない時点でおかしい。サスペンス的に使うでもなく、気づいたらピコピコ鳴るカラータイマーにしかなってない。いちいちパスコードを入れる姿も地味だし、結局「今日も生きれた」みたいな台詞を何度も言うだけ。

過去エピソードとの謎のカットバック、なんであんなことするんだろう。ただでさえ寄ってばかりで見辛いアクションなのに、更にその合間にガンガン入ってくるので停滞してイライラする。しかも、そうまでして描いたあの子との関係も特に展開ないし、何がしたいのか全くわからない。

主人公の壮絶な生い立ちと、1日を死ぬ気で生きるしかない諜報員という設定が噛み合ってない……というか、本編丸々かけて描かれるミッションと、主人公が「壁の外」へ向かおうとする物語が全く関係ない。そのため、相棒に「生きろ!」と連呼する姿とあの過去のカットバックが何も機能しない。

これと連動して、背景がなんにも描かれない相棒役の竹内涼真も可哀想なことに。彼の唯一の役割が主人公に「生きろ!」と言われることなので、そこがドラマ的に機能しないと、結局何の存在価値もないキャラクターになってしまう。相棒らしい掛け合いもない訳だし。

エネルギー事業をめぐる肝心のメインストーリーも、ゴチャついているだけで興味湧かず。女スパイとライバルのスパイはただでさえ薄ら寒いキャラクターなのだが、その上やっていることがしょうもない。そして極め付けにあの「依頼主」のオチ……なんじゃそれとズッコけた。何の感慨もないし話が一気にしょうもなくなる。

冒頭のアクションシークエンスだったり、カーチェイスだったり、中国でバカでかい電飾を背景に闘うシーンだったり、邦画らしからぬビジュアルが多かっただけに、それらをカッコよく見せられていないどころか、こんなに金かけて何やってんだと思わせてしまう作りになっているのは本当に勿体ない。
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