Kazu

ナイチンゲールのKazuのレビュー・感想・評価

ナイチンゲール(2019年製作の映画)
4.5

公開前から📎していたにも関わらず、観る勇気がなかった。

覚悟はしていた、たが・・・

とにかく悲しい、悲し過ぎる

1800年代前半、オーストラリア・タスマニア地方「ブラック・ウォー」と呼ばれた時代が舞台。

白人入植者によりタスマニアン・アボリジニ600〜900人ほぼ全滅、大量虐殺。
タスマニア戦争と呼ぶべきと専門家は言う。

ナイチンゲールと呼ばれる美しい声の持ち主、クレア
流刑地タスマニアで自由を奪われ軍隊中尉に意のままにされカゴの鳥。
産後の身体でレイプされ続け、
夫と赤ちゃんを目の前で殺害され復讐心だけを胸に生きていく女性

無慈悲な暴力、徹底的なレイシズムをリアルに描き、
クレアと言う女性の復讐劇をオーストラリアの悲しく閉ざされた歴史の縮図となって映し出されている。

家族を殺した敵を追う数日間、
憎しみだけがクレアの生きる全てであったが、道案内として雇った原住民ビリーと共に原生林が生い茂る森で、ビリーの純粋な透き通る心に触れ、少しずつクレアの気持ちの変化が・・・

セリフが少なく、目配せするシーンが多い中、二人の感情表現が素晴らしく、演技を超えた魂を感じた。

数多くの原住民族を根絶するまで殺害する入植者、

その島で生まれ育った歴史まで奪われ迫害された民族の悲しさをビリーの姿を通し見せつけられる。

現在は純粋なタスマニア人はおらず、その人達も行き辛い土地へと追いやられている。

クレアの憎悪の表現が残酷な殺し方に込められている(目を伏せたくなりますがとても大切なシーンです)
殺害シーンを見るのは苦手ですがこの場面は涙が溢れた。

憎しみは復讐となり連鎖する、
断ち切る事の難しさ、
心のどこかで折り合いをつけなければ殺し合いは止まらない。

人はどうして平等には出来ないのでしょうか?
テーブルの上で食べる者、テーブルの下で食べる者、
私はこのビリーへの接し方に嗚咽してしまった。

シーンの所々にアイルランド民謡が美しく物悲しい歌詞が心をしめつける。

水平線からキラキラと太陽が登る海辺。
クレアとビリー、心が通いあっても二人の距離はまだまだ遠い、
ラストシーンが未来に希望を託す
二人の後ろ姿に込められている様な気がした。

力の強い者が勝ち誇る時代はいつになったら終わるのでしょうか?

過去の歴史ではなく、現在にも繋がっている物語だと思います。
Kazu

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