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ナイチンゲールのKUBOのレビュー・感想・評価

ナイチンゲール(2019年製作の映画)
4.0
これは期待以上に素晴らしい作品でした。

夫の目の前で犯され、回された後、その目の前で夫と赤ん坊を殺された女の復讐の追跡劇!

とだけ言うと、わりとお決まりのよくある復讐ものを想像するんだけど、この作品が深いのは、その舞台と時代背景にある。

1800年代、イギリスからの開拓者たちとアボリジニーとの戦い「ブラックウォー」の起きたオーストラリアのタスマニアが舞台。

惨劇の翌朝、殺された赤ん坊の遺体を友に託して脱兎の如く追走の旅に出るクレアもすごいが、作品の肝は、その追走劇がアボリジニーの青年とのバディものになるということ。

オーストラリア開拓民の中でも虐げられていたアイルランド人。土地を追われた原住民のアボリジニー。

開拓民は黒人(アボリジニー)を「人喰い」と呼び、見ただけで撃ち殺す時代。奴隷のアボリジニーに「黒いのは病気だからか?」とからかう兵士。

クレアも最初はビリーに銃を突きつけ獣のように扱っていたが、夫と赤ちゃんを殺されたクレアと、部族を皆殺しにされたビリーの気持ちが重なり、心を通わせていく件が良い。

「白人のせいで全て失った!」
「ここは俺の国だ!ここは俺の故郷だ!」
ビリーの叫びが胸に響く。

死刑制度廃止が世界の趨勢である中で、復讐、敵討ちをテーマにした映画は数多く作られ続けているのは何故だろう?

劇中、アボリジニーは人殺しを「悪い精霊の化身」と見なし「直す(更生)なんてことはしない。殺すんだ」と言い切る。

クレアとビリーの復讐の行方は? 敵討ちは叶うのか?

復讐劇としてのエンタメ性もありながら、オーストラリアとアボリジニーの問題に深く切り込んだ深いテーマも備えた作品。見てよかった。
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