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記憶にございません!のOBのレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
3.8
練り込まれた会話劇のワンシチュエーションものや、鮮やかな伏線回収作品が大好物な私は、三谷幸喜作品は昔から必ずチェックしています。

彼の脚本による『12人の優しい日本人』や、初監督作品である『ラヂヲの時間』などはまさしく傑作であり、邦画では珍しくディスクを購入、黒澤や小津と並んでコレクション棚に鎮座、何度観たか解りません。

しかし、そんな大好きな三谷作品も、新しい作品が生み出される度に、演出の鋭敏さは徐々に影を潜め、映画の構成としての面白さよりは、贅沢な俳優を使ってのギャグ演出で売るようないわゆる大衆作品が多くなってきました。

それでもまぁまぁ面白く観ていたのですが、一つ前の作品を観てその自己満的な演出に失望、三谷幸喜も終わったかと残念に感じていました。

そんな状況なので、本作も公開時は気になっていたのですが観に行くことはせず、今回WOWOWで放映ということで、複雑な気持ちで鑑賞に臨みました。

結果、今回は良かったですね!

設定自体に風刺が効いていて、脚本も練られ、演出も小気味良く、いつもの三谷組の役者陣も皆好演で、今回は三谷さん冴えていたと思います。

さすがに初期の頃の様な尖った演出は難しく、作風も万人に受け入れられるように丸く作られていますが、それは仕方がないところでしょう。

とりわけ、米国大統領のシーンの演出は(賛否両論かもですが)私は大好きでした。あの大胆な演出が出来るのはさすが三谷幸喜ですね。なかでも通訳を演じた宮澤エマには今回のMVPを差し上げます(笑)

追記ですが、BS放送の割には音響もキチンと作られていて人物の存在位置からの正確な音声には臨場感が3割増し。ここも加点ポイント。


次回作も楽しみになりました!
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